3話 と亀甲縛りと幼女とイケメンとジンの話し合い

 さっきまでは見ている側だった竜車にのり、戦いが行われている場所の近くにある神精霊使い様とかが集まっていると言われている場所に着いた。

「デカすぎだろ!!」

 竜車からおり、直ぐにある御屋敷が領主ミランダープ様のだと聞いていたがさすがにこのデカさは予想外で叫んでしまった。

 にしてもデカい。大きい鉄の編み状の扉があり、開けて中に入ると玄関目掛けて一直線にレンガの道があり、その左右に広々とたが1つもでも抜くことなく手入りされた庭が広がり、中央には噴水が堂々と置いてある。

 異世界に来た時の予想とは違ったが日本にいた時のイメージそのままの御屋敷と庭園に感動していると玄関とおぼしき扉が中から開けられ、中から人が出てきた。

 出てきたのは2人のメイドで赤色の髪の子と水色の髪の女の人がでてきた。2人は瓜二つと思えるほどよく似た顔立ちをしていた。胸は赤髪の方が少し大きめだが、なんて考えていると、

「領主ミランダープ様がお待ちになられております。どうぞこちらへ」と赤髪の子。

「卑猥な考えはここで切り捨てお上がりください。変態さん」と水色の髪の子。

「分かった。それと卑猥なことは少ししか考えてないから変態呼びはやめて。可愛い顔が台無しになっちゃうよ」

「リエルでいやらしい妄想とか万死に値するわ」

「いきなりタメ口だな水色の方」

「それに関してはお客様も同じだわ。それと水色の方じゃなくて、ミエルと呼びなさい」

「はいはい」と頷き、2人の顔を見る。やはり似ている。

「なぁ2人は姉妹·····いやここまで似ているとなると双子か?」

「姉妹でも双子でもどちらでもないわ。物心着く前にここの領主ミランダープ様に引き取られたと聞いているわ」

「そうです。私と姉様は姉妹でも双子でもありませんがそれを超える何かを持っているのです」

 謎の自信を顔にうかべ言う。

「違うのか。それにしてはよく似てるな」

「違うと言ってるでしょ。それよりミランダープ様がお待ちになられてるわ」

「そうだな。じゃ連れてってくれ」

「では後ろをついてきてください」

「あ、変態の名前を聞いていなかったわ。流石にミランダープ様の前で変態呼びは出来ないわ答えない」

「変態って……」頭を振り、「西蓮寺 仁。ジンと読んでくれ」

「それでは今度こそ後ろをついてきてください」

「分かったかしらジン。その粗末な姿でリエルの後ろをついて行きなさい」

「あいよ」



 2



 リエルとミエルの後ろを着いて歩き豪華に装飾された廊下を歩いていた。

「にしても綺麗だな。塵一つ落ちてない」

「当然よ。毎日掃除してるものリエルが」ドヤ顔を決めてくるミエル。

「姉様じゃないのかよ」

「姉様もジンくんもそろそろ着きますよ」

「いきなりくん付け!?」君付けで呼ばれ興奮しているジンに、

「ダメだったでしょうか……ならジンさんですか?」

「いやいや全然ダメじゃないよ!むしろ嬉しいくらい」

「そうですかそれならこれからジンくんと呼びますね!」

 嬉しそうに笑みを浮かべる。

「変態、深呼吸しなさい」

 言われた通り、「ふぅーはぁー」と深く息を吸って吐いた。

「なんで深呼吸なんかさせたんだ?あと変態じゃない」

「卑猥な考えが取れてないように見えたからよ」

「いやもう考えてなかったから!」

「姉様もジンくんもほんとに着きましたよ」

「いいジンここから先はホントに無礼は許されないから気をつけて振る舞うよに」

「ハイハイ分かってますよ」

 その言葉が聞こえてから、リエルとミエルが大きく、シンプルに模様が彫られている扉を開く。

 開けてすぐ目に飛び込んできた光景に目より先に頭を疑った。神精霊使いや領主が居ると聞いていたのだ。頭を振りもう一度見てみるが光景は変わらなかった。高そうな衣服に身を包み手と足は自由に動かせる状態だが、胴体は亀甲縛りにされてる目元にマスクをしている男と思われる人と身長が低く、ちっちゃくて可愛い系の女の子がムチを持って降って遊んでいる。その横で優雅にその2人を見つめながら紅茶を飲むクリュサオル……。

「なんだこの絵面はぁぁぁぁぁ!!!」

 最初の2人だけでも情報量が多いのに、クリュサオルが何も気にせずに紅茶を飲むことでさらに情報量を増やしている状況に、思わず叫んでしまった。

 だがこの絵面を無視して、リエルとミエルは、

「ミランダープ様お客人を連れてまいりました」

 と一言一句ズレることなく言いきり深くお辞儀をした。

「この状況に動揺することなく、挨拶をしただと……!?」この状況で動揺しないことに驚きの顔をするジン。

「これはこれはジンくん初めましてニャン」

 胴体亀甲縛りの男は姿とは裏腹に礼儀正しく挨拶をしてきた。

「こちらこそ初めまして。色々聞きたいことがあるんですけど……いいですか?」

「何かなニャン?」

「それ!まず1つ目のそれ!ニャンって何?可愛い系キャラ狙ってるの!?それならもうここに3人も居るから要らないぞ」

「3人に私も含めてくれるのは嬉しいかしら。こう見えて年は100歳を超えてるからね」

「え?100歳!?」

「そうかしら。クロエは精霊なのかしら。精霊に歳という概念はないけど生きてる年数は100年を超えているのよ」

「へぇー精霊ね。この世界にも居るのか」

 新たな知識に喜んでいると、

「それよーり私の話じゃないのかなニャン?」

「あぁそうだった。なんで語尾にニャンを付けているんだよ!」

「色々な路線がある中どの路線も行けないと判断してね、そこでなら可愛い系でも行こうかなと、そしたら語尾にニャンが着いたニャン」

「どの路線にも行けないと判断したなら可愛い系も外せよ!でもなんでニャ?じゃなくてニャンなんだ?」

「それはーねとある人と語尾が被ってしまったから勝負をしたのニャン。そして勝負に勝ちニャンと語尾に付けれることになったニャン」

「おーけおーけ。このレベルで頭のおかしい奴がもう1人いるんだな」

 すると扉がノックされ開かれた。

 そこにはルビーのように赤く輝く目が特徴的な女の子がいた。耳が長く、スラリと伸びる四肢を白を基調とする仕立てのいい服を身に纏わせている。髪はかなり長いが手入れが良くされてサラサラの状態で腰辺りでまとめられている。

「遅れちゃってごめんねミランダープ。それにクリュサオルとクロエも。」

「別に構わないかしら。丁度ここの変態と遊んでいたのよ」

「はいはい。そういうこと言わないの」

「クリスタ様お久しぶりでございます」

 クリュサオルはそう言って膝をついて礼をした。

「ほんと久しぶりね」そう言って笑ってみせるクリスタ。

「可愛すぎる!なんだこれは」

「やめときなさいジン。あなたには高嶺の花すぎるわ」

「分かってるよ……」

 現実を突きつけられ、落ち込んでいると、

「あなたは……初めましてかしら。私はクリスタ、クリスタって呼んでね」

「は、初めまして!じ、ジンと言います」

「ジンね。これからよろしくねジン」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」



 3



 座り心地の良いソファーに座り、リエルが入れた紅茶を飲み、ミエルが焼いたクッキーを食べる…………なんで俺はここにいるんだ?

 あれ?ここは戦争しているんじゃなかったのか、などと考えてしまうほどゆったりしている。

「なぁクリュサオルここはほんとに戦争の最中なのか?戦争のせの字もないぞ」

「戦争という訳ではないけど、戦っているのは事実だよ」

「戦争じゃないってじゃあ何と戦ってるんだよ」

「一言で言い表すと神とその信者かな」

「宗教的な問題か?」

「半分あってるけど、間違っている。今この国は元は神であったがその非道さゆえに死神と呼ばれている神がいてね、その神とその信者僕らは狂信者と呼んでるんだけどそいつらと戦っているわけさ」

「なるほど…………その死神って奴はどんなことをして非道と呼ばれているんだ?」

「色々やりすぎて言うと多くなってしまうから簡単に言うと自分の望みを叶える為なら手段を選ばない集団だね」

「なるほ……あれ?集団ってことは狂信者の他にも神や仲間的なのがいるのか?」

「幹部と言われてるのが確認されているだけでも5人。まだ居ると言われている」

「そいつらは神なのか?」

「いや、神ではない。神に力を与えられた人間又はその間に生まれた子が幹部となると聞いている。何も幹部はまだ1度も倒されていない。だから詳しい情報も無いんだ」

「そういう事か……よくありガチのことだが、幹部の理念……と言うより目的は同じなのか?自分の目的を手段を選ばすに行う奴としてそこは知りたい」

「目的は全員違っている。そして幹部たちも他の幹部を仲間とは思っていない。ただの私たちを倒しておいてくれる道具と考えている。補足だが、狂信者は元は一般家庭がほとんどだ」

 一旦頭の中で今言われたことを整理する。

 相手は死神と言われてる元は神で今は己の思う正義と欲の為に行動していて、幹部と呼ばれる狂信者とはまた違った敵がおり、その幹部の目的もまた違う。つまり己の正義を持った狂人的な奴が己の欲の為に集まった、もろくて細いがとても硬い正義の元に作られた集団と戦っているわけだ。ここで1つ疑問が浮かぶ。狂信者は元は普通の家に生まれて普通に育つはずだ。なのに何故非道な集団に身を費やし信者となるのか。

「狂信者はなぜ信者になるんだ?」

「今のこの国に溶け込んでいる狂信者が居るらしく、そいつが素質のある奴だけを選び狂信者としての証を送り付けられる。そして狂信者の出来上がりだ。他にも自分から志願してなろうとする奴もごく稀だが居ると聞く」

「それで今は何と戦ってるんだ?狂信者か?それとも幹部か?」

「両方だ……」

 クリュサオルは下を向き続ける。

「私は生まれつき神精霊がついているからほとんど死ぬことは無い。だが普通の騎士や歩兵は死んでしまう。ここ3日で何百人も殺られた。幹部は狂信者の力を底上げする能力を持っている。だが相手は元は人間だ。歩兵が3人でかかればある程度は勝てる。だが数が多くてなそのため幹部はまだ会えてはいない」

「そうだったのか……少し話が変わってしまうがいいか?」

「あぁ構わないよ」

「そんな戦場になぜ俺は呼ばれたんだ?クリュサオルみたいな特別な力は何一つ持っていないのに」

「いや、君は持っているはずだ。強靭なメンタルと神精霊を」

「いやいや待て待て。俺にはそんな力は無いはずだ。チンピラすら倒せない奴だぞ俺は」

「いや、君は使い方を知らないだけだ。君に眠る力は神精霊を操る力だ」

「使い方って誰に教わるんだよ」

「その為にここに呼んだのかしら」

 するとミランダープの横に居たクロエが割り込んできた。

「教えるって幼女が俺に?」

「だから幼女じゃないかしら。そこのミランダープも私が教えたかしら」

「ミランダープってさっき国最強の魔法使いって言われてた」

「そうかしら。魔法も精霊も大して違いは無いから問題ないのよ」

「さっさと練習するのよ」

 そう言ってクロエは立ち上がり、座るジンの

 袖を引っ張り扉を開けようとすると後ろから気持ち悪い語尾の声が掛かった。

「クリスタ様も良かったらジンくんと一緒に練習してきてはいかがですかニャン?精霊を使う練習はいくらしても足りないですし、今後のジンくんとクリスタ様との関係も考えると1度お話を込めて練習でもしてきたらどうかニャン?」

「うーんそうね。そうさせてもらうわ。よろしくねクロエそれとジン」

「私はどっちでもいいのかしら。さっさと付いてくるのよ」

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