Lt:精霊使いのゼロから生きる道

師走 葉月

プロローグ 死の余剰

 -これはまじでやばい。

 魔法を全身で受けた彼は熱を大量に持った体を冷たく硬い地べたに倒れる。

 明るく心地の春の良い日差しが指していた真っ青な空は煙で闇に染まり、赤い血しぶきが空に散っていた。

 全身の力が上手く入らず、力が抜けていくのを感じる。手先の感覚は既に失われていた。

 痛覚は消えない。

 -熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い。

 咳き込み喉から込み上げる赤い生命の源の原液を思いのままに吐き出す。吐き出す際に喉に力が入りそれに連動するように体から血が吹き出す。

 気づけば、自分の見える所全てが自分の血で染まっていた。怖い。嫌だ。死にたくない。だがそんな願いは届かず、血の流れは止まらない。

 死という概念は死を覚悟、意識した瞬間から意識が飛び始める。彼も例外ではないようで全身から血の気が引いていき、意識が遠のいていく。

 音が聞こえ魔法で建物が崩壊していく音。人が空から落ちグチャとあげる音。そして近づいてくるの足音。

 近づいてくる。逃げなきゃ。せめて逃がさなきゃ。でも動けない。

 ドカッと横に人らしき物体が降ってきた。

 彼を斬った奴が横に新たなる犠牲者投げ捨てたようだ。

 せめて彼女だけは逃がす。そう言って彼女に手を伸ばすも彼女の生命は既に途絶えていた。

 そんな絶体絶命の状態に絶望し、失望し、自分の力のなさを責める。

  だが、それでも彼は生きようと足掻く。

 そして彼ー西蓮寺 仁は時を遡った《タイムループ》。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る