カルネアデスの舟板(カルネアデスの板とも)という言葉があります。
ざっくり、こういう話。
船が大破して、海に投げ出された人がいます。仮に海斗君としておきましょう。溺れそうになって危なかったのですが、近くに浮いていた舟板につかまって難を逃れます。
すると側に、溺れそうな人が現れて救助を求めてきます。こちらは仮に茜さんとしておきましょうか。
ただ、2人がつかまると舟板は沈んでしまいます。仕方がないので、海斗君は茜さんを見捨てて舟板を独り占めし、結果、茜さんは溺死してしまいました。
刑法第37条第1項本文の、『緊急避難』の説明によく使われる事例です。
この場合海斗君は、法律上いかなる罰も受けません。相手を助けるために自らの命を投げ出せなどと、法は強制しないのです。
はい、以上の話、本作の『海が太陽のきらり』の内容とは一切関係ございません。登場人物の名前はお借りしただけです。じゃあ、なんで書いた〜っ!
本作の海斗くんは、ある事故がきっかけで泳げなくなってしまいました。
話すことが出来ない手話ガールの陽子ちゃんと出逢い、彼女から泳ぎを教わることで、泳ぎを取り戻し、海で泳ぐ楽しさを思い出します。
また海斗くんは、いつしか陽子ちゃんに恋をしてしまいました。う〜ん、アオハルだね〜。
但し、2人の心に重くのしかかる問題がありました。茜さんの存在です。
っと、これ以上書くとネタバレになっちゃうから、ここまで。
ドロドロしたお話ではありません。
登場人物がみんな優しい。
その中で私は、敢えて茜さんにMVPをあげたい。理由は、カルネアデスの舟板?
読後感の良い作品です。でも、茜さんのことを考えると、ちょっぴりおセンチになっちゃいます。海斗くん、きみはさあ!
……って、まあ良いか。茜ちゃんも海斗くんの幸せを望んでいるでしょうし。
無月弟先生、執筆お疲れさまでした。
寂しいお話になってしまいそうなところを、希望の持てるラストにしたのは、さすがでございます♪ やっぱり物語は、ハッピーエンドが良いですよね☆
共通のあらすじ、タイトルを用いて様々な作者様がオリジナリティを織り込んでいく自主企画の参加作です。
定められたあらすじの中でどれだけその作者様の個性が光るか……というのが興味深いのですが、本作は作者様らしい、素直な優しさに包まれたストーリーになっていると感じました。
ですが、それだけでは終わらないのが流石というべきところだと思います。
このストーリーは、誰もが知る、とある物語がモチーフとして織り込まれています。
そのモチーフに気づかせるための伏線も実に巧みに張られておりました。
モチーフとなった物語は、決して幸せとは言えない結末を迎えますが、はたして本作の登場人物は…………?
気になる方は、どうぞ本編でお確かめください(^^)