かじかんだ指先に熱が戻っていくようなぬくもり

当初、氷の令嬢と呼ばれるほどに頑なだったヒロインが、始めから見せていた凛とした美しさと人形のような「人に不馴れな」可愛らしさが、彼女の魅力に読者を引き込みます。
その中で、一見冷静で淡白な主人公が、時折見せる強引なまでの熱さが、ヒロインの心の氷壁へじわじわと通っていく様子に、こちらも自然と二人の仲を応援したくさせてくれます。

ところが、この主人公とヒロインの攻守がある時、見逃してしまうほど自然に逆転しました。その瞬間から、ヒロインはさらに無邪気な愛らしさを見せて、無防備に主人公に心を委ね、一緒にいたいという気持ちを示し、とてもほんわかとします。
その一方で、以前のまま振る舞おうとする主人公がやや戸惑いながらも、彼女との関係を無意識に深めていくのが、とても甘酸っぱく、愛しい気持ちにさせてくれます。

まるでかじかんだ指先に熱が戻っていく時の、むず痒くて、でもその内から自分を食むようなくずったい熱を、もっと望み期待するような、そんな素敵な物語です。

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