この物語は、母親を小さい時に亡くした小学生女児の真冬の手のひらの上で動かされてます。
小学生にして軍師、人を自分の思い通りに動かしていく悪女、心理学専攻の大学生も顔負け、しかも自分が子供であるという立場を完全に使いこなしていくこの真冬は、将来きっと人を誑かす傾国の美女になるでしょう。
でも真冬が導くのは、自分も幸せ、お父さんの駿も幸せ、お母さんになってほしいまつりも幸せという大団円な、ごくごく普通の幸せに満ちた家庭です。多くの子供が当たり前に浸っていたり、あるいは夢見ていたりするそんな『日常』を手に入れるために、自分が行動するのが真冬のすごいところです。
そして真冬の望みは誰もが幸せ、つまり真冬は人の幸せも願い、自分ももちろんその幸せの中にいる、という善なる心の持ち主です。彼女をきちんと教育すれば人を誑かす悪女でなくて、人の運命を思い通りに誘導する優しい魔女になれるでしょう。そう、フェアリーゴッドマザーのような。
物語の中で描写されるだけでも真冬の才能は圧倒的です。まともな大人が相手からすぐ彼女の手のひらの中で幸福へと転がっていったと思います。
それなのに。
真冬のお父さんの駿は、昔の恋は引き摺るわ、それがなくても優柔不断で押しに弱いわ、決めるべきところで尻込みするわ、それどころか自分の気持ちと把握できてないわのだめだめな男。
対する駿とくっついてお母さんになってほしいまつりときたら、頑固だし自己肯定感薄いし一歩踏み出すのに気後れしてるし自分の幸せなんてまるで考えてないし、それはもうめんどうくさい女。
お前ら、真冬の幸せを言い訳にしてとっととくっつけと何度思ったことか。
当人達だけでも進展が望めないのに、まつりの親族が苛烈で、駿にいらいら、まつりにふさわしくないと暴走、酷い目にあった駿がまたうじうじ逃げ出すんだから、まぁ、面白いエピソードが続くこと続くこと。そして読んでるこちらの焦れったさも積もること積もること。
そんな中で真冬が頭を捻り果敢に行動して、だめだめな大人の距離を本人達に気づかれないようにそして時にはわざと気づかせて接近させる手腕は見事でもあり健気でもあり、表彰してあげたいくらいです。
真冬、きみは最高のキューピッドだよ! 自信を持って! きみじゃなきゃ、だめだめなお父さんとお母さんは結婚できないんだから!