新人類ゲーム

金星人

新人類

これだから最近の若者は、、、

目の前にいる若者は大きなヘッドフォンで耳をふさいでいるためよけてくれず、電車から降りられないのだ。私はしがないサラリーマン。全てがそれなりの人生でサラリーマンになるべくしてなったような普通の人間だ。だからこうしてぎゅうぎゅう詰めの通勤ラッシュの電車に乗るはめになっていたのだが。

毎日好きでもない満員電車に駆け込み、汗をだらだらと流し、やっと降りられたと思ったら部長に部活の世話がなってないとか、仕事が遅いとか、そんなプロジェクト上手くいくわけ無いと怒られ残業させられる。それはブラックだ!という人もいるだろうが会社などそんなものだ。働き方改革と叫んでいたのはもう昔の話。みんなそんなの忘れてしまったらしい。そんなこんなでやっと終わって家に帰っても冷めきった残り物のおかずと家族が待っている。最近話したのは、、、先週の土曜日か。確かに夜遅くまで起きていて欲しいと言うのは申し訳ないが今ではこれが普通になってきていて、たまに早く帰るとムッとされるのが嫌でも分かる。もはやだんだんとなんのために生きているのか分からなくなってきた。もう疲れた。何も考えたくない。いっそこのまま____

と風呂や歯磨きを終えて布団に入りながらそんなことを考えていると朝がやってくる。そんな日々を送るのが私の仕事だった。


また朝か_

彼は鉛のような体を起こして満員電車に乗り込み、会社に行く。昨日と同じように上司にガミガミ言われ、同じように残業し、同じ帰り道で同じような残り物と家族の在る家に帰る。

同じことが繰り返される毎日。明日も明後日も死ぬまでずっと_

こんな現実いつまで続くんだ。

そう思うといよいよ我慢できなくなってきた。いや、本当は毎日そんなことが薄々よぎってはいたのだが何とか耐えてきた。一度大量の睡眠薬を買い込んだことがある。お察しの通りだがその時は誰にも話してはいなかったのに何故か家族にばれていた。遺書も書いたりはしてないのに。あの日大量に飲もうと手に持った瞬間娘と妻が私の書斎に入ってきて

そんなことしちゃだめ!死んだら何にもならないわ!

と泣きながら止めてくれた。不謹慎かもしれないが嬉しかった。実はそんな風に思っていてくれたなんて。それがなかったら今の私はなかった。

しかしもう駄目だ。もう疲れた。申し訳ないと思う節も有るのだが心も体も限界だ。こんな現実とはおさらばしたい。

私は決断した。私は机の引き出しにしまっていた薬の瓶を出し、蓋を開けて口に流し込み飲み込んだ。

私はこの現実で十分やった。もう無理なんだ。さようなら__


私の動きは止まった。完全に静止している。そうなるのも当然だった。

「あぁまた駄目だった。またゲームオーバーだよ。この人種だと途中までは上手くいくんだけどどうしてもこの辺の年齢で疲れてきてへたっちゃうなぁ。一回やばそうだったからさ、ある製薬会社が手軽に新薬の試験体になって高額をもらえる代わりにかなり危ないものを飲ませる事件が多発してるってイベントを実装して家族が勘違いで自殺を止めちゃうってことで何とか乗りきったんだけど、こんな立て続けに弱るとさすがに手がないわぁ。お前ここクリアできた?」


「いやぁ、俺も出来てないよ。難しいよなここ。」


部屋の空間上に映し出された3Dホログラムを覗き込みながら話し合っている。とそこでお母さんが一階から大声で話しかける。

「ご飯よー、はやく降りてらっしゃい。」

「はーい。」

二人の男の子こめかみあたりに軽く人指し指を当ててホログラムを消す。

「続きはあとだな。ちゃんとセーブって念じたよね?」

「あぁ、うん……」

二人はしたに降りようとした。そこでさっきから難しい表情をしていた弟が足を止めると、突然目を見開いて満面の笑みで話し出した。

「あぁ、良いのを思いついたぞ…!今度のは我慢強い人間じゃなくて能力を減らそう。人間の脳の、ここの回路を弱くして現実と夢を区別できなくしてだな、、、」



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