第426話 まさか遺跡が・・


「テツ様、先の戦いではお世話になりました。 それで私に何か御用でもおありでしょうか?」

美人さんは、落ち着いた口調で話す。

「い、いえ・・特に、その・・用はないのですが・・」

俺は言葉に迷い焦る。

「テツが気に入ったようだぞ」

ルナJrが言う。

あほか~、このチビ!!


美人さんが微笑みながら言う。

「テツ様、ありがとうございます。 ですが、私などではとてもとても・・あ、レア様がテツ様のことをよくお聞きになっておりましたが、どうなのでしょうか?」

美人さんに軽く流される。

まだ始まってもいないのに、この疑似失恋のような感覚を味わわされるとは思ってもみなかった。

・・・

ウベールは爆笑みたいだ。

こ、殺す!

それにレアって、あの変な話し方するお姫さまだよな?

う~ん・・パス!


そんなことをしていると、遺跡の場所についたようだ。

山一帯の自然は戦闘前の状態に戻っている。

戦闘後、土魔法とかで状態回復をさせたようだ。

山頂に到着し、遺跡の入口のところに行ってみた。

大きな石が重なりあっている。

入り口は、王宮の管理下に置かれているので、調査団員たちが触れると地下へ続く通路が開かれた。

「おお! こんな入り口なんだ」

俺は思わず言葉が出る。

調査団員たちが先に入り、俺は後からついて行く。


少し階段があったが、すぐに広い空間に出た。

明かりは魔法で保っている。

ん?

ここで行き止まりのように見えるが、調査員たちが迷うことなく歩いて行く。

状態回復の時に、少し調査もしていたようだ。

黒い石のようなものの上に乗っている。

なるほど。

俺も一緒に乗せてもらう。

石の大きさが変わった。

全員が乗っても大丈夫な大きさになる。

調査員が黒い石に手をかざすと、パネルのようなものが出てきた。

パパパッと何やら操作している。


俺たち全員を乗せると、音もなく移動している・・ようだ。

ようだというのは、どちらに動いているのかわからない。

上に行っているのか下に行っているのか、そもそも移動しているのかどうかもわからない。

いきなり調査員たちが歩き出す。

どうやら石が停止したらしい。

石から降りて歩いて行くと、こじんまりとした空間が現れた。

調査員たちがいろいろ話している。

ウベールが俺に話しかけてきた。

「テツ殿、どうやらここで邪神王の復活の儀式が行われていたようです」

ウベールは俺に話しながらも調査員たちを見守っている。


俺も調査なんて偉そうなことを言ったが、何もわからない。

ただ、どんなものがあるのかを知りたかっただけだったが、俺では役に立ちそうもない。

そう思ってルナJrを見てみると、真剣な顔をして考えている。

「ルナさん、どうかしたのですか?」

俺は聞いてみた。

「・・うむ。 なんと言うか、不思議な感じがするのだ」

ルナは言う。

俺はすることがないので、調査員たちを見ているだけだ。


1時間くらい経過しただろうか。

調査員たちがウベールや神聖術師たちと話をしている。

・・・・

・・

ウベールたちが俺の方へやってきた。

全員がややがっかりしたような顔をしている。

「テツ殿、どうやら何も得られるものがないようです」

ウベールが言う。

「はい、邪神王の復活で、この空間の魔素はなくなっています。 それに魔法陣も何の反応もしないようです」

神聖術師たちが言う。

「それってどういうことですか?」

俺は思わず聞いてしまった。

「フフ・・言葉を悪く言えば、抜け殻といいますか、本当に遺跡になってしまいました」

調査員たちは笑いながら言う。


「遺跡ですか・・で、この遺跡の由来はわかりますか?」

俺は聞いてみた。

「はい。 過去に我々の星にあった文明の技術に似ているのです。 確かザナドゥという都市国家だったと思います。 いやむしろそれよりも古い感じがします」

「そうなんですか・・でも、なんでこの地球にあるのでしょうね」

俺はそうつぶやき、不思議に思いながらゆっくりと歩いていく。

調査員が調べていた魔法陣へ近寄っていった。


突然、ルナJrが叫ぶ。

「テツ、進むんじゃない!!」

「え?」

その声に反応して振り向くも、俺の足が魔法陣へ入っていたようだ。

瞬間、魔法陣を半円形のドームが俺と共に包む。

青白く光っているようだ。

ルナJrも俺と一緒に光のドームの中に入っていた。

俺を突き飛ばそうとしたようだが、間に合わなかったようだ。


光のドームの中から外が見える。

ウベールたちが何やら叫んでいるようだが聞こえない。

ドームの中には俺とルナJrがいるだけだ。

「テツ、すまないな。 ワシが先に気づけばよかったのだが・・」

ルナJrが申し訳なさそうな顔で言う。

俺には何を謝っているのかわからない。

「ルナさん、何を言っているのかわかりませんが、仕方ないですよ」

「だがなぁ・・」

ルナJrが不安そうな顔のままだ。

俺的にはそのうちにドームの外に出れるだろうくらいに考えていた。

ただ、ルナの表情が気になったので聞いてみる。

「ルナさん、どうかしたのですか?」

「うむ、実はな・・この魔法陣を見ていて考えていたのだが、遠い記憶に似たようなものを見たことがあるのだ」

「遠い記憶?」

「うむ。 もう手遅れだがな・・」

ルナがそう言うと、光のドームの輝きが増してきて外に見えていたウベールたちが見えなくなってきた。


青白い光が強くなり、真っ白な光に包まれた。

・・・

・・

しばらくして、目が慣れてくる。

草原が広がっている。

「ここは・・」

俺は思わずつぶやいていた。

俺たちの周りは遺跡の名残だろうか、ストーンヘンジみたいな場所だ。

どうやら別の場所に飛ばされたようだ。

俺は辺りを見渡しながら、目線を下に向ける。

ルナJrもいる。


ルナJrはジッと前を向いていた。

俺は思わず言葉を出す。

「ルナさん、俺たちは転移させられたのですね」

俺は軽い気持ちで聞いてみたのだが、ルナは真剣な顔になっている。

「・・テツよ、ただの転移ではないぞ」

「え?」

俺も言葉を失う。

「ここがどこかわからない。 だが、知っているようでもある」

ルナJrがよく通る言葉で言う。

「は?」


<ウベール目線>


テツたちが魔法陣のところで青白い光に包まれた時。


「な、なんだあの光は!!」

ウベールが急いで魔方陣の方へ駆け寄る。

だが、魔法陣の中へ入ることができない。

青白い半円のドームのような光が、テツたちを包んでいてその光にすら触れられない。

何か空気の圧力というかそういうものがさえぎっている。


「神聖術師たち! あの光はなんだ?」

ウベールの声が大きく響いていた。

「た、隊長、わかりません。 いったい何の光なのか・・」

ウベールはその言葉を背中で聞きつつも、どうにかしてテツたちに接触しようとしている。

「ルナ殿! テツ殿~!!」

ウベールがもがくがどうしようもない。

青白い光がだんだんと強さを増していく。

真っ白な光に包まれる。

・・・・

・・

ウベールたちの視界が回復してきた。


前には単なる魔法陣が見えていただけだった。

ウベールはおそるおそる近づいて魔法陣に触れてみる。

・・・

何の反応もない。

「いったい、どういうことなんだ・・」

ウベールは地面に触れながらつぶやく。

とにかくテツ殿とルナ殿が魔法陣に入って消えた。

それだけはわかっている。


ウベールたち調査団は今までの調査報告を持って王宮へと帰還していく。



『第1部完』


ということにしておきたいと思います。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

当然、続きを書かせてもらうつもりですが、とりあえずこの段階で一区切りおきたいと思った次第です。

話数ばかり増えていき、読み直そうとしたときに長すぎる感じがしたのです。


今までの世界システムも変わり、新しい世界が始まろうとしています。

新世界の誕生だと思います。

その中での物語は楽しいものになりそうです。


後、この段階に来るまでにサイドストーリー的なものがいろいろ浮かんで仕方なかったです。

例えばザナドゥなどの街、アニム王のいた世界の日常、ミランの傭兵時代、テツ以外の地球人の視点、優の目線、じいちゃんの日常などなど、出来上がり次第思うままにアップしてみたいと思います。

まだまだ新世界での冒険は始まってもいません。

転移させられた世界ですが、これが正直2つの選択で迷っている次第です。

地球に所属するディープダンジョンにするのか、完全に異世界転移にするのかというところです。

そして、時間経過です。

戻って来た時に浦島太郎にして、フレイアやシルビア、ルナだけが既知の存在とするのか、それとも今の時間に戻すのか。

そういったストーリーが形になってきましたら、アップさせていただきます。


これからもよろしくお願いします。

本当にありがとうございました。

ボケ猫

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ ボケ猫 @bokeneko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ