第425話 遺跡調査


みんなで軽く食事をしていると、言葉が飛んでくる。

「ところでテツ、これからどうするつもりなんだい?」

アニム王が聞いてきた。

ルナは食べるのに夢中だ。

「はい、私は今度こそいろいろ世界の場所を回ってみたいと思っています。 その前にあの邪神王の復活した神殿みたいなところ・・あの場所を最初に見に行きたいですね」

アニム王が食事の手をとめて俺を見る。

「テツ、なぜあの場所に行きたいのかね?」


改めて問われるとわからないな。

何となくだったのだが、なんでだろう?

俺は少し考えていた。

「アニム王、なぜだかわかりませんが、何となくそう思っただけです」

俺は感じるままに答えた。

「ふむ・・そうか。 それならば遺跡調査ということで、王宮からも何人か同行させてもらっても良いだろうか?」

アニム王は言う。

「はい、私も心強いです。 よろしくお願いします」

俺はそう返事をすると、後はみんなでゆっくりと食事ができた。

美味しいかった。

ルナは相変わらず甘いものばかりを食べている。

この人って、ヴァンパイアだよな?

そんなことを思ってみた。


食事も終わり、俺たちはそれぞれの家に帰っていく。

アニム王から3日後に出発ではどうかと言われたので、俺もそれでお願いした。

帰り道、フレイアと一緒に歩いて帰る。

「星がきれいね~」

フレイアが空を見上げて言う。

俺も上を見てそう思った。

「そういえば、フレイアって初めは屋根で寝てたよな?」

俺はそうつぶやいて笑ってしまった。

「テツ、笑うことないじゃない。 星空の下で寝るのってとても気持ちいいのよ。 風魔法で身体も覆っているから何の問題もないしね」

フレイアが少しムッとした感じで言ってくる。

「そうなんだよな・・自然に包まれると気持ちいいよな」

俺もそうつぶやく。


邪神王の出現も、結局は自然の流れをゆがませて、その歪みの蓄積が溢れて元に戻そうとする作用なんだと思う。

コントロールなんてできないし、現れたら対処するしかない。

それに対処できなければ、滅ぶだけだろう。

そんな繰り返しで自然は成り立っているのだろうか?

だったらいったい生命ってなんだろう・・なんて考えてみたがわかるはずもない。

帰り道、フレイアと二人でとてもいい雰囲気だ。

「フレイア・・本当にありがとう」

俺は思わず言葉にする。

「ん? 何、テツ?」

フレイアの髪が月明かりで輝いている。

きれいだな。

「いや、邪神王の戦いで本当にみんな頑張ったなって思ってさ」

「そうね・・私は囚われて何もできなかったけど、あのモレクって人・・考えてみれば可哀そうな人ね」

フレイアがつぶやく。

俺も晩餐会で疲れていなければ、ここでフレイアを抱きしめてやりたい。

だが、それは言い訳だ。

このハイエルフのフレイア。

その美人さに負けてはいけない。

あの嫁の例もある。

距離が近くなると、俺の命が危なくなるんじゃないか?

そんな考えがフト頭に浮かぶ。

結局、俺の頭に残っているのは女の人に対する不信感か?

・・・

う~ん、考えても答えがでない。

俺はフレイアと分かれ、家に帰っていく。



アニム王の調査団との出発まで、ばあちゃんの家や優の家、嫁の家やフレイアのカフェなどを回って、ウロウロしていた。

そんな中、式典の時の俺の映像が配信されたようだが、どうやら街で俺を見てもみんなわからないようだ。

王宮で借りた服が目立っていたからな。

よかったヨ。

俺はホッとした。


アニム王から出発の連絡が来て、俺は家族たちに遺跡調査に行ってくると伝える。

フレイアはカフェで過ごすという。

ランちゃんも頑張ってくれてるしね、なんて言っていた。

また、冒険に行くなら是非連れて行ってねと念を押された。


俺は王宮に行き出発メンバーを見ると、騎士団隊長のウベールと騎士団員5名。

調査団員7名と一人小さな黒髪の女の子がいた。

どこかでみたような感じだ。

そう思って見ていると、女の子が俺の方を見て言う。

「テツ、何を見ている。 私だ、ルナだ」

!!

「ル、ルナさんですか? どうみても子ども・・凛くらいの子ですよ」

俺は思わず口から言葉が出た。


ルナが笑いながら言う。

「まぁ、そうだろうな。 私の1/10くらいの魔素で作ってあるからな。 私も連れて行け」

は?

俺はそのままアニム王を見た。

アニム王は苦笑しながらうなずいている。

・・・

ま、いっか。

それにルナが言うには、この子供が消えても何の問題もないという。

いやいや、目の前でこんな子供がやられたら後味悪いでしょ。


俺たちはこのメンバーで遺跡調査に向かう。

移動中の短い時間、飛行船の中でウベールが声をかけてくる。

「テツ殿、それにしても変わりませんね。 あの邪神王の戦いをくぐり抜けたとは思えないです」

ウベールはニコニコしながら言う。

「はぁ・・なんと言っていいのか、自分でもよくわからないですね」

俺は答えつつも、調査団員の中の神聖術師が気になった。

あの美人さんだ・・人妻らしいけど。

俺が、ウベールの話を軽く聞きながらその神聖術師をチラチラと見ていると、ルナが声を出す。

ルナといってもチビのルナなのでルナJrでいいだろう。


「テツ、そんなに気になるのか?」

ルナJrがそう言うと神聖術師の方へ歩いて行った。

「おい、貴様。 テツが気になるそうだ」

ブホォ!! ゴホ、ゴホ・・・。

ルナJr、ド直球だな。

それに気になってない・・いや、気になる。

好みのタイプだからな。

声をかけられた神聖術師が立ち上がり、俺の方へ近寄って来た。

俺の前に来ると、軽く頭を下げてフードを外す。

!!

やっぱり美人だ。

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