第424話 晩餐会


王宮に行くと、式典に出席する服を選んで欲しいという。

その後、そのまま式典が行われるそうだ。

式典に出席する服は王宮で借りるのだが・・何だこれ?

こんな服など着たこともない。


何やら式典の様子は全ギルドに配信されるそうだ。

アホか。 

俺は、やっぱり帰ろうと思い抜け出そうとしたが、捉えられる。

顔だけは映さないでくれと懇願した。

無駄だった。

アニム王が、そのうちみんな忘れるよということだった。

ほんとか?

・・・

・・

式典も無事に済み、最後の方で俺の冒険者ランクがSSというランク付けにされるという。

冒険者ランクS以上になると、王宮とギルドの両方の管理下に置かれるという。

まぁそんなに制限はないが、責任は伴うだろうなと少し嫌な気持ちになる。


結局、完全なさらし者状態の気分だった。

初めにアニム王を見た後の俺の記憶がない。

ただ、みんなの目が俺を見ていたように感じたのは覚えている。

ド派手な服のおかげで、俺の顔はあまりわからなかったようだ。

それがせめてもの救いか。


後は晩餐会だが、この状況は配信されることはないそうだ。

16時くらいから王宮の大広間で行われるという。

帝都の街などでは同じくしてお祭りのようだ。

晩餐会には各ギルド、街などの重要人物が出席する。

式典にも出席していたみたいだが。


俺は食べるものよりも、ドワーフのおっさんに絡まれてうっとうしかった。

ただ、俺の飛燕に興味があるらしく持たせてみた。

結果、持ち上げれる人はほとんどいなかったが。

また、じいちゃんがドワーフや鍛冶職の人たちに囲まれていた。

いきなり何かを打ち出そうとするので、アニム王に止められていた。

たった二振りだが、そのきれいな澄んだ打つ音が会場に響き渡る。

少しの間だが、シーンとしていた。

じいちゃんの技術はアニム王国の至宝扱いなのかもしれない。


後は魔王と名乗る子供がいたが、とても感じが良かった。

その横でいた超絶美人には驚いた。

俺は思わずマジマジと見つめる。

名前を聞くとすんなりと教えてくれた。

イシス、ゼグメド、ネイトと名乗り微笑みながら握手してくれた。

なんか、アイドルの握手会みたいな感じを受ける。

ルナさんが超絶美女かと思ったら、まだいたんだな。

俺は一人納得していると、フレイアが近づいて来る。

ギューッと背中に痛みを感じた。


俺の神光気しんこうきでも、このフレイアの気配は感じられないのか?

なんでだ?

危機だろうに・・と不思議に思ったが魔族の人たちに笑われた。

男の魔族もいたようだが、名前は聞いてもすぐに記憶から消えている。


後は泉もチラっと見えた感じがしたが、どこかに紛れ込んでいるようだ。


また、一番驚いたのは真っ赤な衣装をまとった背の高い精悍せいかんな男の人がいた。

一瞬、ミランさんか? と思ったが、ヤバい奴というのがわかる。

強いということだ。

ただ、ニコニコして人当たりが良いようだ。

アニム王にも丁寧に挨拶していたが、アニム王が驚いた顔をしていたと思う。

その赤い衣装をまとった男がしばらくして俺の方にやってくる。

「大きく成長したようだな、テツよ」

は? 

あんた誰?

俺には全く面識はない。


俺の名前を知っているようだが、わからない。

赤い衣装をまとった男は笑いながら言う。

「フフ・・わからないのも無理はない。 フェニックスだよ」

「フェニックス?」

俺は一瞬わからなかったが、すぐに思い出した。

!!

「え~!! フェニックスって、あの都心の領域でいた神鳥の・・」

俺は驚いた。


まさかあの火の鳥が、人の姿になってここにいるなんて・・しかもイケメンじゃないか。

「驚かせたか。 まぁ、我も邪神王の戦いの時には、領域を守るのに少しは力を貸したからな」

フェニックスは笑いながら言う。

・・・・

・・

フェニックスはいろいろと教えてくれて、今度遊びに来いと言ってくれた。

獣人たちも転移してきており、小さな街も出来ているようだ。

他の種族との接触はしていないようだが、街の近くにギルドを設置して帝都とだけは交流をしているという。

獣人か・・俺はそれを聞いてモフモフを想像してしまう。


考えてみれば、このフェニックスに遭遇したのも俺にとっては必然だったのかもしれない。

俺は握手を交わすとフェニックスは人の中へ入って行く。

あの顔だからな、女の人がすぐに近寄って行くようだ。

あの神鳥、わざとやっているんじゃないだろうな。

俺はそんなことを思いつつも、人が集まって来て食事どころではない。

・・・・

・・

晩餐会も終わり、時間は21時。


完全に疲れた。

俺は帰ろうとしたが、アニム王が食事を残しておいてくれたらしい。

手招きをして呼んでくれる。

すぐにテーブルも用意されて、俺は席につかせてもらった。

アニム王、ルナ、フレイア、俺が残っている。

「テツ、疲れただろう。 私もこれでやっと一息つけるよ」

アニム王が少し疲れた様子で飲み物を飲んでいる。

「アニム王、ありがとうございます。 ほんとに疲れました」

俺がそう答えると、ルナが笑いながら言う。

「お前たちはだらしないな。 このスイーツもなかなか・・」

ルナは甘いものばかりを食べている。

フレイアも疲れたようだ。

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