さよならとうきょう

naka-motoo

さよなら・・・

電車の窓から見えるのは夜の街

神田のビジネスホテルが時速200km超で走る電車の

その初速のスピードに流れて

同乗者たちはこの感覚がわからない


東京がいちばんよいとはけして思わぬが。


くそ・・・


負けたのならわかる

いたたまれなくなって引き払うのならどんなにわかりやすかったか


生まれてから生地でくらした年数とどっこいの日々。

神保町の書店

サンシャインの展望台

文芸座の紫煙に曇るスクリーン

初めての代々木公園でスミザリーンズをヘッドフォンを被って歩く


プリンスのコンサート

中止になったレニー・クラヴィッツのコンサート

待ち合わせのタイミングでロックを愛するひとたちと回し読みした大友克洋の「さよならにっぽん」「気分はもう戦争」


エレファントカシマシのコンサート

奴隷天国を叩き込まれて怒鳴り返す客たち


王子駅を麓にそびえたつ飛鳥山公園

都電をぐるんと見渡す高台 しかも切り立った

その上から街を見下ろす女子だけのロックンロールバンドを夢想し


エレファントカシマシの歌にある歌詞そのままに読み漁った小説たち

今は、もう、読めない


大手町から東京駅をさまよったり

池袋から大塚、巣鴨とうねり登り下り


なんでもないアパートの屋上から真夏の夜のほぼ見えない星を見上げ


もう、戻れない


時間軸も、物理的距離も


そしてもうその街へ行く経済的余地もなくって


くそ・・・


代わりにわたしのキャラたちが東京の街を歩き

東京の街で息吹き

東京の街で悩みそこから日本の他の県へ、あるいは世界へ、ありえなくも宇宙へ


喫茶店の、ウェイトレスやウェイターたちが灰皿を置いて客の動きに目を配る小さなカウンター


ありがとうということとはまったく違うのだけれども


ひとこというなら


さよなら

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