第7話 お手製のゴーレム
ポーションの番人として錬成するものは、ゴーレムだ。
ゴーレムは硬い鉱石で形成されており、魔力で動く兵器だ。
今回ゴーレムに使う鉱石は鋼。
それもかなりの量の鋼だ。
ここで鋼の剣を複製し、鋼を用意するという手は真っ先に考えられる。
もちろん、それで代用する部分も無くはない。
しかし、ゴーレムとなると鉱石の品質が強さに直結する。
複製で楽をする訳にはいかない。
そこで俺は山の地質を分析した。
これは錬金術ではない。
無属性魔法が可能にすることだ。
無属性魔法と錬金術はイコールではない。
錬金術とは無属性魔法を応用したものなのだ。
戦闘に適性の無い分、無属性魔法は本当に色々なことが出来る。
だからこそ余計に、無属性魔法が冷遇されるこの時代の有様は理解できない。
「……ふむ。少量ではあるが、鉄鉱石の存在が確認できるな」
それらを全て採掘すれば、ゴーレムを作るだけの量を用意出来るだろう。
そして材質変化を使い、鋼にすればいい。
「採掘も無属性魔法頼みになるな。さて、どうするか」
俺の無属性魔法の才能は、自分で言うのも何だが、かなりの物だ。
使う魔法は、ある程度自由が効き、幅広い。
いや、こう言った方が適切か。
──俺の無属性魔法は自分のイメージした魔法を扱うことが出来る。
イメージが上手く出来ていなければ、魔法が成立しないなどの制限はある。
そして相手を直接攻撃するような魔法も厳しい。
しかし、
こういった魔法があればなぁ。
と、痒いところに手が届くような使い方が出来るのだ。
例えば、アイテムバッグを作成したとき。
最初に亜空間を作成したと思うのだが、あれは無属性魔法を利用したものである。
能力の割に合わない魔力を要求されるのだが、俺の魔力量が多いことと、ポーションでの回復を前提とするならば問題ではない。
「さて、魔力回復のポーションの貯蔵は十分にある。大胆にいこうか」
鉄鉱石が埋まっている座標を明確にし、その空間一体を取り出す。
「よし、鉄鉱石ゲットだ」
赤褐色の石が取れた。
これは赤鉄鉱と呼ばれるもので主成分は酸化鉄である。
酸素を除去し、炭素の割合を増やせば、鋼となる。
魔力の減りは大きいが、ポーションを飲まずとも余裕で全部の鉄鉱石を採掘出来るだろう。
今の俺は、それぐらいに魔力量が多くなっている。
まぁこれでも心許ないが。
さて、この調子でどんどん作業を進めていこう。
◇
「──完成だ」
目の前にあるのは2mもある鋼の塊。
不格好で太くはあるが、ちゃんと手足が存在しているのが見て分かる。
胸には動力である赤紫色に光る魔石がはめ込まれている。
これがポーションの番人──ゴーレムだ。
「どのくらいの強さなのか把握しておきたいな」
魔物と戦わせてみるか。
Dランク、Cランクぐらいが丁度いいだろう。
となると、魔物が生息している森に行けば、見つけることが出来る。
俺はゴーレムをアイテムバッグに入れ、領地から少し東に行ったところある森へ駆けて行った。
「……ふぅ、到着っと」
木々が生茂る森に入る手前の場所。
街道から外れた位置にあり、ここら辺は何も整備されていない。
早くゴーレムの実力を見てみたい。
無属性魔法で魔物の気配を探ると、結構な数いることが分かった。
たまには、のんびりとくつろぎながら、ゴーレムの出来を鑑賞するとしよう。
少し森に足を踏み入れたところで、アイテムバッグからゴーレムを取り出す。
そして命令を下した。
「ここに現れる魔物を討伐するのだ」
ゴーレムは返事をするかのように、胸の魔石を点滅させた。
良い子だ。
俺は、近くにあった幹の太い木を登った。
「変形」
木の枝を木材にし、寝転がれるだけの床を作り上げた。
そこで横になり、ゴーレムを眺める。
素晴らしい観客席だ。
「お、魔物が現れたな。あれはEランクの大ネズミだな」
でかい二足歩行のネズミ。
最初の相手としては丁度いい敵かもしれない。
ゴーレムは大ネズミの存在を察知し、向かっていった。
「結構早いな」
鋼で形成されいるため重いのだが、普通の人間が走るぐらいのスピードで移動してみせた。
大ネズミもゴーレムを敵とみなし、臨戦態勢に入った。
そこで先制を取ったのはゴーレム。
純粋な右ストレートが大ネズミを襲った。
「おおっ!」
直撃すると、大ネズミは吹っ飛ばされ、木にぶつかり動かなくなった。
それ以上、ゴーレムは追撃を加えることなく元の位置に戻っていった。
「普通に強くてビビるのだが……」
間違いなくアルヴァレズに属する騎士のほとんどよりも強いゴーレムに驚きを隠せなかった。
「あ、また魔物だ。今度はDランクのシルバーウルフか」
シルバーウルフはEランクのウルフの上位種。
白い毛並みで全長1mほどの四足歩行の魔物。
さて、Dランク相手にはどうなる?
……結果は大ネズミのときと変わらず。
魔物が変わっただけで、同じシーンを二度見せられた。
その後、Cランクのオークも現れたが、結果は同じだった。
ワンパン。
思っていた以上に強いゴーレムが出来上がってしまった。
だれも錬金術を知らない世界で、転生した錬金術師は無双する 〜使えないと思っていた才能が、実は錬金術に最適だった件について〜 蒼乃白兎 @aonohakuto
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