よく粗食に耐え、砂漠で太って帰ってくるような生き物がエルフである。

 こんな一文をあらすじに持ってくる時点で、作者のセンスがうかがえる事と思う。「おいおい」と愉快に思われた方は迷わず読んでほしい。(こんなレビューに目を通す必要はない! 期待を裏切られる事は無いから安心して読み進めていただきたい)

 そうは言っても作品の雰囲気や傾向ぐらいは知りたい方もおられると思う。

 「星を斬るクラン」は、エルフの少女クランの冒険活劇だ。あらすじ通りの愉快な生態を持つ、それでいて美しい生き物であるエルフ、その中でも飛び抜けて美しい少女/未熟者/うっかり者/世間知らずの身の程知らずであるクランが溌剌と旅をする物語である。

 旅立つ理由は武者修行。
 抱いた志は天より高い。
 そんなクランの旅路を、あなたは目にする事となる。

 旅先での愉快な出会いがある。
 血の湧くような強者との闘いがある。
 道連れとの別れはどこか物悲しい。
 そうした旅を経て、健やかな主人公が(多分)大きく成長していく物語だ。

 軽妙な文章にげらげら笑い、濃密な剣戟の描写で手に汗握り、痺れるほど格好いい啖呵に喝采し、それでいてしんみりとさせてくる。

 魅力にあふれたこの物語を、どうか読んで欲しい。

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星を斬るクラン