姉もね。~双子同士の恋愛事情~
あさかん
プロローグ「私の家族はね」
私はね、平凡な家庭で育つノーマルな高校生の双子の姉。
母もね、普通の人で授業参観とかで教室の後ろにいてもそれほど恥ずかしくない程度の人。隣の席の子に「アレ私の母」と指差して紹介できる程度にね。
父は、ええと、正直言いたくないんだけどもまず顔がうるさいの。わかる? 喋ってないのに顔がうるさいんだよ。無言でソレなのにその上喋ったらもう祭りだ、完全にフェシティバルだ。
そういや同じクラスの美琴に父の悪口を言ったことがあるのね。私的にはちょっとした話題づくりのつもりで軽いノリだったんだけど結構怒られたのさ。もうガチでおこだったわけ。
『家族の為に一生懸命働いて育ててくれているお父さんのことを、そんな悪口言う優香ちゃんなんてキライっ!』
別に美琴パパのことを悪く言ったわけじゃないんだけど……あの子絶対ファザコンだわ。
でも確かに美琴のお説教をちゃんと聞いてたらなるほどと思う節もあるのね。ほら私って見た目が良く言えばクール、悪く言えばちょい悪だからさ、ティーンにもなればそれなりに悪い道へ誘われることも結構なわけよ。
そんな誘惑に目も触れず……そりゃチラ見しそうになったことくらいはあるけれど、それでも今のところ真っ当な道を進んでいるのは、いつも先手を打ってヤイヤイうるさく言ってくる父のお陰かのかもしれない。
おっと、先に出てしまったけれど優香と言うんだよね、私の名は。
そんでもって妹の伊織はね、アレだよ。確かに可愛いんだけれども、姉からしたらやっぱりほんの少しワガママなところが目についちゃうんだよね。
ちょっと母体の中で隊列的に後衛だったというだけで、何かあるとすぐに「お姉ちゃん、お姉ちゃん」って頼ってくるのさ。ざっと見積もっても私のスタミナの2割は日々妹に持っていかれてるような感じ。これがスマホゲームなら軽く40分は待たないと回復しないレベルだね。返せ私の40分。
後は容姿的にも性格的にもなんか得している気がする。なんていうか頼り上手というか、守ってあげたい系というか、いつもふにゃっとしてるし母も父も妹には激甘なのさ。二卵性なんで私とは似てないんだ。さっきも言ったけど私はどっちかというとキリッとタイプ、外見はね。
それでこの前なんて、学校の帰りに正門のとこで別の学校の男の子から声が掛けられてさあ。そん時は「私にもとうとう時期が来たか!?」と
私も流石に言ってやったさ、そんなこと自分で言いなさいって。それでもしつこく食い下がるもんだから『タピオカミルクティーを10分で買って来てくれたら考えてあげる』と無理難題を吹っ掛けたわけ。
ウチらの地元って中途半端に田舎なんですぐ近くにコンビニがあるわけでもなくて、チャリをモリ漕ぎしてギリいけるか? って感じの無茶振りだったんだけどね。
ところがどっこい、その男の子は陸上部のエースだったみたいで10分チンで戻って来ちゃったのよ。サトシ凄えわ。ああ、名前はわかんないんだけど、なんとなくサトシっぽかったからサトシと名付けました。
まあ、流石に私もヤバいなって思って平謝りしましたよ。ちゃんと500円渡してお釣りの20円は結構です、と。そして妹の件は勘弁してください、と。
だってさあ、私が伊織の許可取ってLINEとか教えるのは簡単だけど
それになんかムカつくじゃん? 姉より先に彼氏とか。
そんな妹の初彼チャンスをぶっ壊してしまったこともあってか、「素敵な恋人が欲しいなぁ」なんて伊織がちょいちょいボヤいてくる度に心が痛む。
そんなの姉と一緒の女子高受けて一緒に合格しちゃった伊織も悪いのよ。そんなに欲しがるなら数学教師の渡辺(32歳)あたりに凸ればいいじゃん。メガネだけど独身だし、すぐに声が裏返ってしまう男だけれども。一応学校で一番若い男なんでクラスで一人か二人くらいは既に凸ってるしね、結構倍率高いんだから。
……やっぱり私が悪いかもなので、今度サトシに合ったら伊織に繋いでみようかと思ったりもしております。
そんなこんなでね、姉もね、それなりに結構大変なワケですよ。なので温かく見守ってやってください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます