幻聴日記

音澤 煙管

聴力は良い方でした……




以前から気にして居たが、

ここまで酷くなってはいくら仕事では、健康が売りもののわたしでも通院と言う文字が目の前にチラついた。

耳鳴りは稀にあったが、それが次第に声に変わりやがて会話をする癖となってしまったのだ。これはもう重症の領域であろう、今は病院の待合室に居る。保険証を提示、受付を済ませ初診のアンケートの様なものへ書き込む。過去の重い病気、ナシ!現在の処方している薬、ナシ!たばこ、アルコールの頻度や量、多少とナシ!……と慣れては居ない身、やっと書き終えて受付へ手渡す。

午後の一番で受付を済ませて今は午後四時、なかなか呼ばれない。

患者の数も一人減り、二人減り……と、わたしとあと一人になってしまった。あれから3時間半は待っている、待てど暮らせどまだ呼ばれない。仕方ないので、また受付へ。


「あのう?診察にまだ呼ばれていないんですが、いつになりますか?耳鳴りが酷くなってきました!もう限界です!早くしてください。」


「は?ここは胃腸内科ですよ。

それから、だいぶ前からお呼びしてましたがお返事が無かったので、気が付かれて帰られたのかと思いました。今、緊急で来られた方のお連れさんと思っていましたが。」


「……え?」


ここでも現実と幻聴が混同していたのかぁ、アンケートを書き込んだタブレットを見せてもらい、具体的な症状を誤変換していたらしく、

"細菌、減腸が酷い。"

と打ったらしい……わたしは、この日は諦めて帰宅した。今日は我慢してこの幻聴と会話を続ける事にした。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幻聴日記 音澤 煙管 @vrymtl

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ