第6話 二枚のすのこ対ふみ対わし

 ガムテープはアカンかった。けど、このまんまではおられへん。

 ふっと思いついたんや。

 すのこやったら、どうや?

 もう使つこてへんのん引っ張りだしてきて、台所の入り口に立てかけたった。ほんなら、


 ……一発で飛び越えよった。


 台所の上に飛び乗りよんのに、それより低い板を越えられへんわけあらへんがな。

 アホとちゃうか、わし。


「えいくそ、めんどくさいのう!」


 しゃあない。

 作るがな。

 扉。


 余っとったすのこを二枚、適当に入り口の幅に合わして、ふうふう言うてノコギリで切って。

 切った切れ端を適当に打ち付けて、二枚をつないで。

 適当なとこに蝶番で取り付けて、取手も付けて。

 磁石を張っ付けて閉まるよにして。


出来でけた!」


 どや、なかなかの出来やないかい。

 わし、器用やねん。何でや知らん、不器用や思われんねんけど。

 ただ、ちょっと適当なだけのこっちゃがな。


 細かいこと、そんなん知らん。




 離れて眺めて、


「ええやないか」


 満足して、


「つれて来たろ」


 危ないさけ二階の部屋に入れといたふみ、出したった。




 クンクン。

 ふんふん。

 カリカリ。

 ぐりぐり。

 ゴリゴリ。

 ごろん。


 にゃー。




 いろいろやって、最後、わしに向かって鳴きよった。

 入られへんで、鳴きよった!


 ふうふう言うて作ったかいがあったがな。

 すのこの勝ちや。


「よっしゃ。あー、疲れたら腹へったのう」


 中途半端な時間やけど、飯の準備に取りかかった。

 これでやっと、ちゃんと料理が出来るいうもんや。やっぱり火ぃやら包丁やら使てるときチョロチョロされんのは気になるさけ、ろくなもん作られへんかったからな。


 機嫌よう鼻歌うたいかけたとき、



 にゃー!


 ごっつい声でふみが鳴く。


 にゃー!


 扉の向こうから、近所に響く声で。


 にゃー!


 延々、文句言い続けよる。


 にゃー!




「こら、うるさいやないか!」


 にゃあーー!






 ……わかったわいな……。


「早よ作るさけ、そない鳴くなや……」






 これからもろくなもん作られへん。


 まあ、ふみ来る前も大したもん作ってへんか。

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ふみとわし 鷹山雲路 @kumoji

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