黄金色の髪に魅せられて
明弓ヒロ(AKARI hiro)
第1話 狩人たち
男たちが草むらに潜み、バイソンの仔を狙っていた。男たちは合わせて5人。皆、黒髪に漆黒の肌を持ち、しなやかな筋肉をまとった精悍な体をしている。しかし、その中に、ただ一人、貧弱な体躯の少年が混じっていた。
男たちは、そっと目と身振りで合図しながら音を立てずに忍び寄り、バイソンの群れを取り囲んだ。皆、緊張しながらも生まれつきの狩人特有の自信あふれる態度で槍を構え、バイソンの仔が群れから離れるのを、辛抱強くじっと待っている。
草を
男たちは少しずつ包囲の輪を狭め、バイソンの仔の逃げ道を塞ぐ。バイソンの仔が飛び出してきたら、いつでも刺せるよう準備をしているが、ただ一人、少年だけは、傍目からもわかるほど緊張に体が震えている。
その時、わずかな風が吹き、バイソンの仔が頭を上げた。その瞳に緊張が走り、仲間の群れたちの元へと向かおうとした瞬間、男たちが
バイソンの群れがパニックになり、一斉に走り出す。
男たちのうちの何人かがバイソンの仔を孤立させるように群れとの間に入って槍を振り回し、残りの男たちがバイソンの仔に襲いかかる。バイソンの仔は目に恐怖の色を見せ、必死に逃げ惑った。一人の男から逃げおおせたと思いきや、別の男が道を塞ぐ。その男を躱して逃げると、また別の男が襲いかかる。
生きる糧を得るため、男たちも必死に追うが、バイソンの仔もまた、生き残るために必死に逃げる。そして、その必死さが活路を作った。バイソンの仔が男たちの包囲を抜け一目散に走る。しかし、走る方向は群れとは逆だ。そして、男たちを引き離し、方向転換のため足取りを緩めた時、草むらに潜んでいた少年が飛び出した。
少年が満身の力を込め、槍を突き出す。だが、バイソンの仔の腹部に、わずかに先端が食い込んだだけで、少年の手から槍が落ちた。バイソンの仔と少年が、互いに恐怖にすくんだが、先に正気を取り戻したのは、バイソンの仔だった。
少年は両手を広げ、バイソンの仔の行く手を阻むが、バイソンの仔は突進して、少年を突き飛ばそうとする。なんとか、かけ転びながら躱し、落とした槍を拾って再びバイソンの仔を追うが、少年の足では獣の速さにはかなわない。
しかし、逃げおおせたと安心したバイソンの仔の前に、突然、小さな影が飛び出した。そして、飛び出すと同時に、手に持っていたいた槍で、バイソンの仔の腹部を深々と突き刺す。バイソンの仔は断末魔の悲鳴を上げるが、その影は腹に突き刺した槍を素早く抜き、バイソンの首にとどめを刺した。
眼前で起きた一瞬の出来事に呆然とする少年の前で、影は、たんたんと作業をこなす。首から槍を引き抜き、石器を取り出し腹を切り裂き、素早く内蔵を取り分けていく。その手際の良さに、時間が止まったように感じていた少年の時間が、やっと動き始めた。
影は自分と同じ子どもだった。
同じ?
人間の子どもには間違いない。背丈は少年と同じぐらいだが、恰幅は少年よりもよく、頑丈で逞しい体つきをしている。まとっている毛皮の服、手にした石器や先程使っていた槍も、少年が使っているものと似ている。
しかし、その子どもの肌は白かった。そして、髪の色は、まるで太陽の光のような
突然、その子どもが解体の手を止めた。そして、持てるだけの肉を持ち、現れたときと同じように、瞬く間に草原の中に消える。少年が子どもが消え去った草むらを暫く見つめていると、背後から仲間の狩人が現れた。
狩人たちは、少年がバイソンの仔を仕留めたことを喜び、すでに解体を始めた手際の良さを褒めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、少年は何度か狩りに出たが、黄金色の髪の子どもに出会うこともなく、また、狩りで獲物を仕留めることに成功することもなかった。
少年は、次第に仲間から疎まれるようになり、狩りでも重要な役目を与えられず、驚かす役目や、獲物を仕留めたあとの処理を淡々とこなすだけになった。
そして、何度目かの狩りのあと、川で血のついた槍や石器を洗っていると、仲間の一人が大声を上げた。皆が集まると、そこには
皆が、その子どもを取り囲んで、助けるべきか相談する。一人でも、仲間は多いほうがいい。女であれば、将来、仲間の子を生むこともできるだろう。しかし、この子を連れ帰って、本当によいものか? そもそも、我々と同じ種族なのか?
倒れていた子は、かつて少年が狩りで出会った子どもだった。
少年の一族のような黒い髪と漆黒の肌を持つ人々と違い、白い肌と
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