第2話 夜の帳
連れ帰った少女は、ひどい怪我を負っていたが、少年が暮らす一族の薬師の手により一命をとりとめた。そして、強靭な体ゆえか、皆が驚くほどの速さで回復した。
一族の最も年長の女が少女に話しかけたが、少女の反応は鈍かった。言葉を全く理解できないわけではないようだが、少女はまるで幼子のようだった。年長の女が、辛抱強く接すると、少女の家族は近くに住んでいたが、病気で皆亡くなり、その後は一人で狩りをしていたが、寝ているところを
他に行き場のない少女は、少年の一族といっしょに暮らし始めたが、そこには常に種族の違いゆえか違和感があった。髪の色や肌の色の違いだけでなく、何か持って生まれた根本的な違いがあるようだ。薬草の違いや、蔓の
少年の一族は、暫くの間、洞窟にとどまって狩りをし、季節が変わると、また、別の洞窟に移動して狩りをする生活を繰り返していた。そして、洞窟から洞窟に移動する間には、別の一族と遭遇することもあった。
一族同士が出会うと、貯蔵していた酒を皆で飲んだ。そして、それぞれの一族で互いに気に入った男女が夜を過ごした。体が大きく筋骨隆々の頑健な男は、女から好かれた。たくさんの薬草を知り、服を作れる女は、男から好かれた。
洞窟からの移動中、何度か別の一族と遭遇したが、貧弱な体の少年が女から選ばれることはなかった。そして、明らかに異質な黄金色の髪の少女が男から選ばれることもなかった。
夜、男と女が互いに体を寄せ合って眠っている。
一人、毛皮にくるまっていた少年がふと目を覚ますと、鳥の声が聞こえてきた。今まで聞いたことのない珍しい鳥の声に耳を澄ませる。その鳥の声は、なぜか少年の心を揺さぶる。
訝しげに感じた少年が洞窟を出ると、空には満点の星が瞬いていた。星明かりに照らされ、少年は鳥の声が聞こえる方へと歩いていく。鳥の声は木の上ではなく、岩の上から聞こえてくるようだ。少年が暗闇に慣れた目で岩の上に目を凝らすと、白い肌の少女が座っていた。
少女は何か棒のようなものを口に当てているようだ。少年が近寄ると、少女が棒を口から外し、鳥の声が止んだ。暫く、少年と少女が見つめ合ったが、少女が棒を口に当てると、再び鳥の声が聞こえてきた。
少女の手が動くたびに、鳥の声が変わるようだ。その様子を見ていると、少女が棒を突き出した。少年が棒に目を近づけると、鹿の骨のようだ。そして、その鹿の骨には穴が空いている。少年が首をかしげると、少女は穴の一つに口を近づけ息を吹いた。すると、鳥の声が響く。少年がびっくりすると、少女が息を吹きながら、指で別の穴を塞ぐ。今度は、鳥の声が変わった。
口を開けて驚く少年に、少女が再び棒を突き出した。少年が恐る恐る、棒を手に取る。そして、穴に息を吹きかけた。
しかし、鳥の声は聞こえない。
再び、息を吹きかける。
やはり、鳥の声は聞こえない。
少女が少年から棒を取り上げ、穴に息を吹きかけると、鳥の声が響いた。
皆が寝静まる中、少年は少女に寄り添い、少女が
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