第3話 洞窟

 少年は狩りに出なくなった。代わりに、皆の槍に使うやじりを作った。少年の作る鏃は、他のものが作るよりも鋭く、形や大きさも一定していた。そして、仲間が狩りに出ている間、少年もどこかに出かけることが増えていった。


 ある日、石器を作る作業を終えた少年が、黄金色の髪の少女を誘い、近くの洞窟へ連れて行った。その洞窟は入り口が狭く、太陽の光が中まで入らない。少年は松明に火をつけ、少女に付いてこいと合図をする。少年が消えた洞窟を、恐る恐る少女が入った。


 洞窟の中はすぐに真っ暗になり、松明の光だけが、二人の周りを仄暗く照らし出す。少年は恐れを知らず、どんどんと奥に歩いていく。力には自信のある少女だが、何があるかわからない暗闇は恐怖の対象だ。たとえ僅かな歩みでも、丘を一つ超えたかのようだ。


 少年が立ち止まり、松明の火を壁に寄せた時、少女が悲鳴を上げた。


 洞窟の中に鹿がいた。逃げようとする少女の手を少年が抑えた。何をグズグズしている早く逃げねばと少女が逆に少年の手を引っ張る。しかし、少年は落ち着いている。少女が振り返って鹿を見ると、不思議なことに鹿は動きを止めていた。


 死んでいるのかと思ったが、立ったまま死ぬわけがない。落ち着きを取り戻して、よく見ると、鹿が走った姿のまま洞窟の壁に閉じ込められている。恐る恐る、壁に近づくが、鹿が動き出す気配がない。


 何が起きているのか理解できない少女の手を引き、少年が別の壁を松明で照らす。すると、そこにはバイソンがいた。そのバイソンも動きを止め、壁に閉じ込められている。


 少年が別の壁を照らすと、今度は牛がいた。しかし、牛の上半身だけが壁に閉じ込められ、後ろがない。


 少年が木の枝を取り出し、半分に切れた体に当てた。そして、木の枝を壁に沿って動かしていく。すると、木の枝が動いたあとの壁の色が変わった。少年が、どんどん木の枝を動かしていく。壁の色がどんどん変わり、終には、壁の中に牛の下半身が現れた。


 少女は気を失った。

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