東京No Man’s Land:第一部「Broken City / 驚爆危城」

@HasumiChouji

序章:東京壊滅の日

「なぁ、ゆっくりしてきなよ……まんざら知らない仲じゃねぇだろ」

 部屋の主らしき男が話し掛けたのは、椅子に縛り付けられた2人の屈強そうな軍服の男だった。

 椅子に縛り付けられた男の片方は四〇前後の白人で、階級章からすると、海兵隊の少佐。もう片方は、三〇前後のアジア人……おそらくは日本人で……特務憲兵隊大尉の階級章を付けていただった。

「何、緊張してんだよ、リラックス、リラックス」

 部屋の主らしき男は、歌うような陽気な口調でそう言った。

「少佐……こんな真似をして……ただで済むと……」

「どっちみち、東京全体が……下手したら日本全部がただじゃ済まねぇんだぜ。俺1人の身の安全を心配して何の意味が有る?」

 そう言うと、部屋の主は、映画「モンティ・パンソン:ライフ・オブ・ブライアン」の劇中歌「人生の明るい面だけを見ていこう」を歌いながら踊り始めた。

 ガンっ‼ ガンっ‼

 部屋の主は、踊りながら、2つの椅子を蹴り倒す。

「おい、お客様の御注文は自白剤だ。死なねぇ程度の飲ませて、確実に聞き出せ。特務憲兵隊の『三種の神器』の在処ありかをな」

「き……貴様……まさか……」

「まぁ、それほど役に立つとは思えんが、他人ひとをビビらせるには結構なオモチャだ。俺がもらう事にするわ。『国防戦機』特号機と、パイロット候補と……動力源」

「了解しました……。その3つの在処ありか、確実に聞き出します」

 そう答えたのは……白衣に仮面の男だった。奇妙な仮面だった。右側は鮮かな明るい赤に笑っているような表情、左側は暗くくすんだ緑に泣いているような表情。

「あ〜、そう云うの、俺、嫌いなんだよ。『わかったぜ、親分』とか『がってんだ、兄貴』とか『俺にまかせな、先輩』とか……もっと、くだけた言い方をしてくれねぇかな?」

「おうよ……親分」

 仮面の男は、何の感情もこもっていない口調で、そう答えた。


 二〇一X年八月一六日、富士山の噴火により日本の首都機能が壊滅したその日、東京都八王子市にある医療刑務所は、名前も過去も不明な1人の男と、その配下により占拠された。

 その男について判っている事はただ1つ……。

 数年前に日本を占拠したと、同じく数年前に創設された日本の軍事機構「特務憲兵隊」が共同で開発した「」だと云う事だけだった。

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