第4話 真面目な住人トール
保護されてから数年が経過して少女から、女性と呼べるくらいの年になった頃。
「おやおや、お嬢様ではありませんか。おはようございます」
「こんな朝早くから見回りですか、大変ですねぇ」
将来里の長になる事を期待された、私の朝は早いです。
日が昇ったばかりの時間から里を歩いて、書く場所に異常がないか確認し、外周にいる見張りの人達に挨拶をします。
「おはようございますお嬢様! 今日も動物達に異常はありません。いつも通り元気ですよ」
その後は、里の中にある共同飼育小屋へ赴いて、皆で管理している獣たちの様子を見にいきます。
獣使いの里と呼ばれる事だけあって、管理している獣は実に豊富なバリエーションがあります。
現実世界で見たような、ワンちゃんネコちゃんから、この世界ならではの動物サラマンダーやコカトリスなどもいます。
もふもふのケモノだけじゃなく、頑丈で屈強な生物もたくさん。
「最近入った新参者の獣の体調も良好ですから。何も心配する事はないでしょう」
小屋を見回っていく中で私によく話しかけてくれるのは、この場所の管理者である少年トール。
しっかり者の彼は、真面目な勤務態度が評判で、自警団としての仕事をこなす傍ら、獣の健康管理をしっかりと行ってくれます。
小屋の管理者として彼の右に出る者は少なく、もっとたくさんお獣の世話をする事が彼の将来の夢らしいです。
獣使いの里では、お世話できる獣の数が、その人のステータスを決定づけているため、この里の中では私を除いて一番身分の高い人ともいえるでしょう。
現実世界の常識で言えば、身分の高い人と言えば、豪華な着物を着て不自由を感じずにのんびり生活しているイメージですけど、この世界の獣使いの里では、それは当てはまりません。
身分の高さ=できる人間というイメージがあるため、トールの様な人が持ち上げられるのです。
事実。
「トール様、三番小屋の子が騒いでるので様子を見てもらえませんか」
「分かりました。今いきます」
獣の管理で何か困った事があれば、真っ先に彼が頼られます。
「では、お嬢様、失礼させてもらいます。明日もお待ちしていますので、またいらしてくださいね」
張り切る彼に「頑張って」と伝えた私は、小屋を後にしました。
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