第5話 陽気な住人アリオ



 獣使いの里では、ほぼすべての住民が、獣と共生しています。

 里に住む者には守らなければならないルールがあって、必ずパートナーとなる獣を一匹は選ばなければならないらしいです。


 立派な獣使いになるためには、成人の儀までに特別なパートナーを選ぶ必要がありました。


 けれど、「バウッ」「ワンワンッ」「ニャーゴ」「ピイピイ」まだ私は、これといった獣が決められないでいます。


 だって、どれも皆可愛すぎるから。


 つぶらな瞳の鳥や、もふもふな毛並みの犬、愛らしい鳴き声の猫。


 どれか一つを選ぶなんて無理だった。


 だから私は。


「お嬢、まだパートナーを決めてないの? 早く決めちゃえばいいじゃん」


 というように、周りの人からそう言われ続けています。


 町の人は、「猫が良いですよ。猫ならネズミとか害虫とかとってくれますし」とか、「犬だよ。番犬になるし、見張りだってしてくれます」とか、「えーっ、鳥でしょ? 小さいから飼育スペースとらないし、餌も少なくてすむんですから」とか言って、色々とすすめてくれるんですけど、やっぱりどうしても一番が決められません。


 それはともかく日課です。

 子供の獣達にお世話をしている里の子供達を見守りながら、私は今日も頭を悩ませています。


 ここのところは、将来の獣使いである彼等がさぼらずにちゃんとお仕事しているかどうかを見ているのです。


 そんな風に、子供達を手伝いながら、真っ白な子犬のもふもふを味わい……ではなく世話をしていると、悩む私に近づいてくる男性がいました。

 彼は、よく知っている幼なじみです。自警団に入ってますが、夜目が効く彼のお仕事は暗くなってからが多いので、お昼は里の中をぶらぶらしてます。


「お嬢って、皆に平等に優しいけど、そのぶん優柔不断だよね」


 お分かりの人もいるかもしれませんが、彼は先程の改装の、「まだパートナー決めてないの?」のセリフの人です。名前はアリオ。


 彼だけは他の住人と違って私に気さくに話しかけてくれます。

 でもだからといって、礼儀を気にしないわけじゃなく、場面によってはちゃんと切り替えてくれます。

 最初は里の住人達は彼の言葉遣いを注意してたんですが、明るくて前向きであまりにもあっけらかんとしている態度だったので、次第にあきらめてしまったようです。

 私が彼の態度を咎めていないのも大きいかもしれませんが


「そんな事はないわよ。皆が大切で愛おしいだけ」


 私はそう言いながら、子犬を愛でながらその獣を思いっきり堪能します。

 柔軟剤を使ったかのように、ふわっふわのこの手触りがすばらしい。それでいて、櫛をいれてもどこにもひっかからさそうな毛並みと、目に入れてもいたくなさそうな艶が(略)


「お嬢って、今が幸せならそれで満足そうだよね」


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