水脈




こうやって、耳をぎゅーっておさえるの。


彼女はそう言って、耳を塞ぎながら、鼻と口だけを水上に残し、海に沈んだ。


「、、、、。」


暫くすると、ゆらゆらと揺れていた身体が実体を表す。


「こうするとね、ドクン、ドクンって、心臓の音が聞こえるの。


私が唯一生きてるって感じられる瞬間。」



–––––ああ、今日も。今日も生きてしまった。

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