疑心暗、喜!
トッポトッポ
サイズ違いのブーツを履いて、1人、暗い畦道を行く。
私の足音と、胸騒ぎのような虫の声、諭すような草の擦れ合う音が耳に響く。
この道に街灯や灯りは、少しもない。
天気がいいのが救いだった。
月明かりの下、暗闇に慣れてきた目を凝らしながら一歩一歩踏みしめて歩いた。
トッポトッポ
吹き去る風が私を煽る。
私のスカートと切ったばっかしの髪が星に会いたいと叫ぶ。
私は手に力を入れ、肩にかけている大きな鞄の持ち手を握った。
大きく息を吸う。
私は目を瞑った。
目前の道が深い疑心暗鬼の沼に変わった。
ただまっすぐに歩けば良いのだ。
怖くない。
そう思い込んだ。
私は慎重に、より慎重に一歩を踏み出した。
土の詰まる感覚が足の裏の神経から脳へ駆ける。
潰れた野草の青臭い匂いが嗅細胞の隅々にまで蔓延する。
水がチロチロと流れている。
私は立ち止まる。
眼を開ける。
何故かさっぱりしたような、清々しいような気分になった。
カッポカッポ
私はまた一歩ずつ足跡を増やす。
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