第5話 独りだと飽きるしモチベが続かないしエーテル生命体を造ってみたい。


 05


「飽きた」


 この部屋で目覚めてから一週間程経ったあたりで遂に飽きが来てしまった。

 というのも、体内エーテル量がある程度増えて安定して体内を循環していて、水とパンぐらいなら瞬時に生成でき、探知も既に最高効率な気がしている。鑑定はとっかかりがない。


 折角なのでウィンドカッターとかウォーターカッターとかアーススパイクとか攻撃に使える術も一通り試して完成してしまったのでネタ切れ感がある。

 回復系はまだだけど、わざわざそのために怪我するぐらいなら防御固めた方が賢い気がしたのであんまりやる気がない。

 解毒とか解除系はやる気はあるけどこの場だと試しようがない。

 なので残りは練成系、アルケミーな方向。


「こう、なんだ。ナビゲーターが欲しい。妖精とか精霊とかそういうサムシングはこのセカイに居たりしないか?」


 三人寄れば文殊の知恵とか言うけども。会話して議論して検討できる相棒的な存在が欲しい。


「なんだろうね。ホムンクルスとか、魔法生命とか、そういうの生成できないかなぁ・・・・・・」


 召喚でもいい。

 でも、召喚ができるなら普通に日本に帰れる可能性が出てくるな。

 そもそも召喚もどうやるんだって話だ。


 なお、転移はできた。どこでもドア方式で扉二つ作って設置するだけのお手軽仕様。

 これがきっかけで収納もできるようになった。空間を繋げるんだから、繋げる空間は亜空間でもかわらんと気がついたのだ。

 しかし日本への転移は何故かできなかった。ドアを開けてもどこにも繋がらず部屋の奥が見えただけだ。


 結局、この一週間でわかったエーテルの使用法はイメージの現実化だということ。

 イメージできたことがエーテルを使って現実のものとなる。

 逆にイメージできないと何も起きないということだ。


「大気中のエーテルを集めて圧縮して結晶化したら自我に目覚めたりしないかね? スライム生命体の核とかそういう代物だろ?」


 思い立ったが吉日。ということで早速実験である。

 体内エーテルを薄い布状に展開して周辺の野良エーテルを捕獲。そして布エーテルを小さくしていき球形に圧縮していく。


「どこまで圧縮すれば結晶化するかねぇ?」


 体内エーテルの結晶化ではなく周辺エーテルの結晶化を行うのは差違があるか知りたいからだ。

 それに、体内エーテルの結晶化だと俺素材100%なので目覚める自我も俺ではないかという危惧がある。

 別に俺が二人に増えたところであまり意味がない。知識量が増えるわけでもないしな。


 そこで周辺エーテル100%の結晶ならセカイの意志の個体化になったりしないだろうかという仮定に思い至った。


「そーれぎゅぎゅっと」


 布エーテルをぎゅうぎゅう球形圧縮。野球玉大を通り過ぎ、ゴルフ玉大にまでなって圧縮に抵抗が出てきた。

 だがまぁまだまだ圧縮できそうだ。

 ぎゅっぎゅっと小さく小さくしていきビー玉ぐらいの大きさになった辺りでこれ以上無理という気配。


「とりあえずこれでいいか」


 布エーテルを解消するとコロンコロンと薄緑色な半透明の玉が床に転がり落ちた。

 ひょいっと取り上げて顔の前に持ってきてジッと眺める。


「自我とか、自意識とか芽生えたりしてない?」


 エーテル玉はうんともすんとも言わない。失敗だろうか。


「ん~む、圧縮が足りないのか大きさが足りないのか。それとも結晶化しても意識が芽生えたりしないのか」


 とりあえず、これ以上の圧縮は専用の機器でも作らないとできないので後回し。

 もう少し大きくしてみるか。


 と、いうことでさっき方法だと全然野良エーテルを確保できてないから別の方法。

 風を作って一箇所に吸引する。んで吸引収獲したモノを圧縮。さっき作ったエーテル玉を核にして大きくしてみた。

 何度か繰り返して、何層かになったエーテル玉はピンポン玉ぐらいの大きさになった瞬間、変化が起きた。


「―――!」


 鈴が鳴るような涼やかな音色が響いて、エーテル玉がぷかぷか浮遊した。


「お? おぉ! 成功した!? マジで!??」


 ダメ元気分で実験していたから余計に驚きが襲ってきた。


「俺がわかるか? しゃべれるか?」


「―――」


 鈴の音。どうやら喋れはしないらしい。しかしヒュンヒュン機敏に動いて何か伝えようとしている感じはする。


「むむむ。もう少し大きくなれば喋れるか?」


 なんかよくわからんがピカピカ発光して返事してくれた。


「よし。もう少し大きくするから受け入れてくれな」


 そしてベースボール大に拡大したあたりで遂に望みが叶った。


「痛ったい! 強引! 無茶苦茶! こんな方法で覚醒させるとか鬼畜の所業!」


 脳が蕩けるような可愛らしい女声に俺は言葉を失った。

 不覚。

 自分でも信じられない程の衝撃だったと言って良い。


 ちょーかわいいぞコイツの声。

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