第2話 リスクもなしにスキルが取得できるわけがないよね。


 02


「魔力? マナ? まぁ、名称はともかく、体内に詳細不明なエネルギーがあるのは把握できた。これを、どう動かすか、だ」


 なんでこんなことしてるんだ、と思わなくもないが、面白そうなものを見つけたら遊んでみるのが男ってもんだ。

 男の精神なぞやんちゃな一桁年齢からほぼほぼ成長しないのだ。外付けの常識で猫かぶれるようになるだけなのだ。

 逆に言えば齢くうにつれて被ってる猫が肥大化するだけで中身はなんも変わらんというダメな存在が男って生物だ。


 だから、こんなオモシロエネルギーが体内にあるなら遊んでみたくて仕方なくなってしまう。


 エネルギーは胸の真ん中、心臓にほど近い部分に溜まっているように思える。

 知覚したらはっきりと認識できるようになった。

 鼓動に合わせてグルン、グルンと回転しているのがわかる。


「オヤクソクとしてなら次は全身くまなく流動させられるように特訓か」


 他にも、とりあえず利き手に移動させて放出してみるという案もあるが、俺はせっかくだから全身流動を選ぶぜ。


 丁度良く心臓付近にあるのだからと、心臓の鼓動に合わせてエネルギーが体の末端へと広がっていくイメージを描く。

 血が体内を循環しているのは知識で知っているから、それに合わせてエネルギーも循環させられるだろうか?


「めぐれ・・・・・・めぐれめぐれ・・・・・・」


 特に意味はないが、言葉にするとイメージの補強になるだろうと唱える。


 鼓動と共に回転する熱いエネルギーがイメージに乗って“のっそり”と動き出した。


「!!!?? GrGGGGGGGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaああああ」


 痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛痛ああああああああああああああああああああああああああああ


 ギチギチギチギチ、灼熱の棒を無理矢理押し込まれ、押し広げられ、ブチブチ引っぺがされるような痛みが体を襲った。


「あっっっっっっっtぐっっっっt」


 体が跳ねる。痙攣する。あまりの痛みに呼吸ができずビッタンビッタンのたうち回る。

 止めようにも一度動き出したエネルギーは止まることを知らず。

 血が血管を流れていくようにブチブチ何かが剥離するような感じと共にエネルギーが通る管が無理矢理作られていき、そこをドロドロしたエネルギーがグツグツした熱さで巡ってゆく。


「っっっっっっっっっっっっっっっ死・・・・・・・・・・・・」


 あんまりにあんまりな痛みにショック死するんじゃないだろうかと俺は。オレわぁああ。


「あっっはぁ、はぁ・・・・・・おわっっった?」


 いつまでも続くかと思われた拷問じみた痛みが突然消えた。


「あぁ~~~いきてるぅぅ・・・・・・」


 どうやら全身の管の開通が完了したようだった。

 呼吸を整えながら、目を瞑って、巡りを感じる。

 ドロドロと動きは鈍いがエネルギーが巡っているのがわかる。ちょっとづつ動きが良くなっている気がするから、たぶん動かし続ければさらさら流れるようになるんじゃなかろうか。


「あれか。某物語に出てくる魔術回路を体内に作るってこんな感じなんかな・・・・・・」


 とにもかくにも、体内循環は成功したのだ。ちょっと軽率すぎた気もしないけれど結果良ければ総てヨシだ。


「とりあえず、しばらくはグルグル廻しておくか」


 一息ついて、落ち着き、全身脂汗でべちょべちょになっているのに気がついた。


「きもちわりぃ。でも仕方ないか」


 死ななかっただけマシである。


「あぁ、そうだ。汗を出すみたいに全身から放出できたりするんかな? エネルギーで全身コーティングして強化と防御する魔法とかあるじゃん?」


 思いついたらやってみたくなるのが男ってもので。


「あああああああああああああああああああああああああAAAAAAAAAAAAAAAああああ」


 体内の管はさっき出来たが、体外放出用の管はまた別なのだと身をもって体感してしまった。


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・死ななかったからセーフ・・・・・・」


 この後、視覚コーティングすればエネルギー見えるようになるんじゃねという発想で危うく失明しかけるのもオヤクソクであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る