第4話 属性変換術の試行。あとトイレ。


 04


「まぁまずは水だ。飲める水さえ生成できれば生存率が上がる」


 ということでエーテルを右手に。手の平の上で球体を作る。


「うん? 以外と成形難しいな」


 ほんのり光る緑色のエーテルが手の平の上でぷるぷる動いている。

 いるのだが一向に丸くできない。


「これはなんでだろうな? できない感じはしてないけど、むずい・・・・・・」


 ぐぬぬ。


 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 それから小一時間苦戦して、やっとこさ手の平大の球体の生成に成功した。


「まさかこんな大変だとは・・・・・・」


 軽く揉んでみる。ぷにぷに。

 エネルギーの筈だが粒子でもあるっぽいので、こうしてそれなりの量を使用して形成すると物質っぽいかんじにもなると判明。


「う~ん謎い・・・・・・」


 さて、実はこの球体、まだ手と繋がっている。この繋がりを切ると野良エーテルになって俺の操作を離れるのか、まだ操作できるのかが重要だ。


「うまくいってくれよ」


 ぷつり、と繋がりを断った。消えはしなかったが、操作できる感じではない。


「というか、なんかただのスライムボールみたいな」


 結果、ぷよぷよしたエーテル物体ができただけだった。


「どうしよこれ」


 握りつぶしてみる。ぐしゃっと崩れ、物質から粒子になったのか吸収できた。


「ふむ・・・・・・」


 とりあえずもう一回球体を作る。

 ちょっとだけ早く作れた気がしたのでやっぱり慣れなのかもしれない。


「みずになれー。みずになれー」


 繋がりを切ると操作できないとわかったので繋げたまま変換操作を試みているのだが、そもそもエーテルが水になるってどんな変化だ?


「みずになれー」


 イメージ。とにかくイメージだ。この目の前にある緑色の球体が水の玉になる。水の玉になる。水の玉に・・・・・・。

 脳内で水の玉に変化する映像を構築できた瞬間、変化が起きた。


「まじか。一瞬じゃん」


 水の玉が手の平の上に。形が崩れない理由はわからないが、成功である。


「じゃ、飲んでみるか」


 玉に口をつける。特に膜があるとかそういうこともなく水だ。普通のいつも飲んでいた水に思える。


「うん、大成功だな」


 水の玉を飲み干す。体内でエーテルに変わるということも無い感じだ。玉の分のエーテルを消費して、水という物質に変換した。

 これはそういう現象で間違いじゃなかろう。


「よし。水ができるって事は、他の物質もできるな。簡易トイレだけ作っておくか」


 そうして、土器のバケツトイレは簡単に作れた。ちょっとエーテルの消費が多かったが問題なし。


「これ、排泄物の処理とかできないだろうか?」


 幸いにまだ尿意も糞意もない。今の内に処理までできる状態にしておいた方がよかろう。


「さて、どうするか・・・・・・。微生物たっぷり腐葉土とかか? どうやって生成する? もっと生成が楽そうな処理法はないか?」


 トイレ処理・・・・・・、水洗はあたりまえだが無理だ。腐葉土もさすがに煩雑すぎて無理。

 もっと、こう、簡単な。いや、待てよ。家庭用生ゴミ処理機ってのがあったな。

 ゴミ出しが面倒で使ってた時期があったが、あれ、ただのおが屑をぐるぐる掻き回してただけだよな?

 つまり、おが屑を生成して、掻き回す機能をつけたバケツ作れば処理できるな。


「よし、作るか。まずはバケツだ。底面にプロペラつけて二重底にしてゼンマイ仕掛けにすればいいだろ」


 と言うことでさっき作った土器トイレは分解。

 いきあたりばったりな感じだが別に何か損をしてるわけでも無し、どうでもいいな。


 とりあえず土器でバケツを作る。で次に木製の幅広プロペラを作成。んで次に金属でぜんまいバネ。それと手回し取っ手。


 エーテルはとりあえず自然界にあるものなら変換できるっぽい。

 おおざっぱに“土”という変換ができるのだから“金属”とか“木材”とか雑に指定した変換も可能な御様子。


 何度か試行して丁度良い回転速度のぜんまいバネを作りだし、最終的に一回全部消し去って、「おが屑処理式ゼンマイ仕掛けバケツトイレ土器完成品」という状態のものをエーテルで作り上げた。


 性懲りもなくエーテル欠乏で意識飛ばしかけたのはご愛敬。

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