天才eスポーツプレイヤーの挫折・再生・成長を青々と描くヒューマンドラマ

 天才というのが世の中には少なからず存在します。
 彼らは常人とはあきらかに違う能力を持って僕たちの前に現れます。
 神に愛されているとしか思えない環境、能力、そして本人の適性、運。
 人間というのは基本的に不公平にできており、その不公平さに凡人はなぜ自分は凡人なのかと嘆き、時に諦観を持って凡人でよかったなどと思うものです。

 けれども。

 天賦の才を与えられても。
 そしてそこに努力を重ねても。

 天才が幸福を掴めるかというと決してそうではない。

 神かそれとも運命か、不幸にもその才能を開花させることなく、腐ってそのシーンを去っていくということが、この世界では当然のように起こります。

 いわゆる挫折は平等に人に降り注ぐのです。

 天才でも凡人でも、人間が生きていれば避けて通れないそれはイベントです。

 そこに折り合いをどうつけるかは人それぞれで、違う道を選んだり、だらだらと惰性で続けたり、あるいはきっぱりと割り切ったりといろいろです。
 逃げるのまた一つの道。そして、その逃げた道から、再び幸運に巡り合って立ち直っていくのも、また一つの再生の在り方だと思います。

 とまぁ、長々となりましたが、これはeスポーツに愛された、一人の少年の挫折と再生、そして成長の物語。

 主人公はかつて日本で初めて欧州リーグに挑んだ(……と思う、すまん、うろ覚え)高校生eスポーツプレイヤー。
 けれども、自らのプレイングの未熟さ、精神的な未熟さから、そのただ一度の挑戦を切っ掛けにシーンを退いてしまいます。

 そんな彼が逃避の果てにたどりついた高校で、再びeスポーツへと巡り合う。
 信頼できる部長、頼りになるかは怪しいが真剣に競技に向き合う部員。それぞれに信念をもって立ち向かってくる対戦相手。そして、袂を別った元チームメンバーにしてライバル。彼らとの交流を経て再び主人公は、eスポーツに向き合い、そして、過去の自分を越えていくべく再び走り始めます。

 青春熱血ものとしては文句のつけようのないストーリー。
 世界設定およびeスポーツシーンに関する描写もばっちり。
 文句があるとしたら各話の更新量についてだけ。(文量もうちょっと加減しろ、子供が読むねんぞ)
 とはいえ、そこはそこそこに筆力のある筆者。読ませてくれます。

 最初はちょっととっつきにくいかもしれませんが、話を重ねるごとに深まっていくキャラクター、白熱するストーリーにきっと最後は満足することでしょう。
 熱い青春モノ。しかも、ちょっと近い未来を見てみたいという方には、うってつけの作品です。

 どうでしょう、この寒い季節に一つ、本作を読んで熱くなってみませんか?

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