想像を補完するコンテンツと小説の親和性は高い。「ステータスオープン」にしたって、実際に自分の“ステータス”を何となくイメージしているから、その助けとなるシステムに惹かれる。ウェアラブル端末など現実に追いつかれてきているけれど。
eスポーツの仮想空間も大いに想像力が必要となる。その想像の仕方と、描写を読み取るプロセスが重なるのだ。見てはいけないものを見るのも小説の楽しみではあるが、「最初から観戦も楽しめるようにデザインされたコンテンツ」ならば、その描写が楽しくないはずがない。
登場人物の、少年少女の葛藤がリアル。派手で無茶な解決なんてことはない。それでも地道な練習から才能が光り、劇的な展開へ繋がるのだから青春やばい。
導入からもう上手すぎるので、ぜひ開いてみてください!
eスポーツのことなど、これっぽっちも知りません。
そんな私でも引き込まれるのは、キャラクター造詣が上手だから。
多くの方が語られるように、登場するキャラクターの個性が立っているのです。
それらにつられて読むうちに、何も知らない初心者にも段々とルールとポイントがわかる構成になっているのは巧みの仕事。ゲーム上の駆け引きで盛り上げてくれるからでしょう。
創作上のテクニカルな部分も魅力の一つですが、最大の魅力はやはりキャラクター。他者との対戦を通じて、時には過酷に成長が描かれます。個性際立つ一人一人の背景と成長を丁寧に拾いながら、進められる物語に興味が尽きません。
eスポーツに関心のある方には、是非とも一度読んでみることを推薦する物語です。
単純にeスポーツが話の取っ掛かりではなく、eスポーツの大会、そしてそこに参加するゲーマーの物語として、もしeスポーツ関連の中継を見たことがある方には、この『MRAF』の世界を通じてもう一つのeスポーツ中継を視聴しているかのような感覚を受けることができるでしょう。
そしてこの物語の中心とも言える『MRAF』というゲームについてですが、その仕組みやルール、勧め方が物凄く魅力に溢れています。
個人的な感想としてざっと話すと、『LOL』と『レインボーシックス』、そして『オーバーウォッチ』の特徴がよく合わさった感じのゲームとなっていますが、これが独特なゲームの進行方法と、プレイする人のフィジカルに強く影響を受ける仕組みによってより面白く感じられます。
(実際にあのようなゲームがあったら、速攻でハマりそうですね。汗)
また極めつけとして、『MRAF』をプレイするゲーマーたちの事も欠かせない存在です。
プロを目指す人も、そうでない人も、それぞれクセがあって個性的な人物が多く登場します。そして物語を通して彼らが抱える事情が紡がれる中で、eスポーツ境界に対する厳しい現実とも向き合っていくそのさまは、この話にのめり込むためのいいスパイスとなり、より話に現実感を持たせてくれる要素となっています。
スポーツ物の青春小説は数あれど、読んでみると「あれ、恋愛ばかりしている?」なんてことがよくあります。
それが良い悪いではなく、青春スポーツモノは「友情」「恋愛」「スポーツ」の3つの比重によってその作品の特色を出しています。
例えば、『バッテリー』なんかは「友情」に重きを置いてます。『スラムダンク』は「スポーツ」だと思います。『タッチ』は比較的「恋愛」を強く意識していますね。
さて、本作についてです。
本作はeスポーツを題材にした高校青春モノではあるのですが、「スポーツ」の比重高めという面白い作品です。
eスポーツという認知されていないスポーツを題材にする場合、普通なら「友情」に比重をおいて、例えば「ひきこもり少年がeスポーツを通して他者と向き合えるようになる」みたいな、それeスポーツの必要ある? みたいな題材でお茶を濁しがちです。(私なら絶対そうする)
しかし、本作は違う。
eスポーツものでeスポーツしてます!(これ、凄いことですよ)
『職業』や『金鉱』や『視界確保』などといったeスポーツ独特の知識や技術をちゃんと説明し、そして試合の経過からの成長までを描いています。このような作品は他にはないでしょう。
eスポーツを知らない人も、よく知っている人もちょっと読んでみてはいかがでしょうか?
架空のゲーム『MRAF』が世界中が席巻しており、eスポーツの代表格として君臨している世界。主人公は、なんと十三歳で『MRAF』世界大会に日本代表として出場しましたが、メンタルの未熟さが露呈する形で優勝を逃してしまいます。その結果チームも崩壊。元チームメイトがそれぞれの道を進む中、主人公は高校生になる道を選びます。そこで出会った新しい仲間と共に、世界の舞台へのカムバックするため全国高校eスポーツ大会の優勝を目指します。
『MRAF』は、日本ではあまりなじみがない(と私は思っている)MOBA (Multiplayer Online Battle Arena) と呼ばれるジャンルがベースとなっています。私は、過去にStarCraft (RTS) やAge of Empires (RTS) のプレイ経験があるためすんなりと世界観に入っていけましたが、プレイしたことが無い方はちょっととっつきにくいかもしれません。
でも大丈夫。作中でゲームの仕様や魅力は存分に解説されています。
ただ、作者がこの小説で本当に描きたいのは、一言紹介でも書いた「リスペクト」「礼節」ではないかと思います。スポーツに限らず、人生においてどんな困難があったとしても「リスペクト」を決して忘れてはならない。そういうメッセージを私はこの作品に感じました。
登場するキャラクターは敵も味方も個性的、大会へ向かう動機も十分で、魅力的に描かれています。個人的には、この先俊介と美桜が接近するのかが気になりますね。
現在は高校編ですが、この先にプロ編が待ち受けていることは容易に想像できます。世界の舞台で戦う『バトルアーティスト』kirishunを見るために、みんなでこの小説を応援しましょう!
天才というのが世の中には少なからず存在します。
彼らは常人とはあきらかに違う能力を持って僕たちの前に現れます。
神に愛されているとしか思えない環境、能力、そして本人の適性、運。
人間というのは基本的に不公平にできており、その不公平さに凡人はなぜ自分は凡人なのかと嘆き、時に諦観を持って凡人でよかったなどと思うものです。
けれども。
天賦の才を与えられても。
そしてそこに努力を重ねても。
天才が幸福を掴めるかというと決してそうではない。
神かそれとも運命か、不幸にもその才能を開花させることなく、腐ってそのシーンを去っていくということが、この世界では当然のように起こります。
いわゆる挫折は平等に人に降り注ぐのです。
天才でも凡人でも、人間が生きていれば避けて通れないそれはイベントです。
そこに折り合いをどうつけるかは人それぞれで、違う道を選んだり、だらだらと惰性で続けたり、あるいはきっぱりと割り切ったりといろいろです。
逃げるのまた一つの道。そして、その逃げた道から、再び幸運に巡り合って立ち直っていくのも、また一つの再生の在り方だと思います。
とまぁ、長々となりましたが、これはeスポーツに愛された、一人の少年の挫折と再生、そして成長の物語。
主人公はかつて日本で初めて欧州リーグに挑んだ(……と思う、すまん、うろ覚え)高校生eスポーツプレイヤー。
けれども、自らのプレイングの未熟さ、精神的な未熟さから、そのただ一度の挑戦を切っ掛けにシーンを退いてしまいます。
そんな彼が逃避の果てにたどりついた高校で、再びeスポーツへと巡り合う。
信頼できる部長、頼りになるかは怪しいが真剣に競技に向き合う部員。それぞれに信念をもって立ち向かってくる対戦相手。そして、袂を別った元チームメンバーにしてライバル。彼らとの交流を経て再び主人公は、eスポーツに向き合い、そして、過去の自分を越えていくべく再び走り始めます。
青春熱血ものとしては文句のつけようのないストーリー。
世界設定およびeスポーツシーンに関する描写もばっちり。
文句があるとしたら各話の更新量についてだけ。(文量もうちょっと加減しろ、子供が読むねんぞ)
とはいえ、そこはそこそこに筆力のある筆者。読ませてくれます。
最初はちょっととっつきにくいかもしれませんが、話を重ねるごとに深まっていくキャラクター、白熱するストーリーにきっと最後は満足することでしょう。
熱い青春モノ。しかも、ちょっと近い未来を見てみたいという方には、うってつけの作品です。
どうでしょう、この寒い季節に一つ、本作を読んで熱くなってみませんか?
最近、テレビやネットで取り上げられることが増えた『eスポーツ』。その世界のリアルな実情が丁寧かつ臨場感ある筆致で描かれていて、自然と引き込まれてゆきます。
登場するキャラたちは、個性的でありつつもリアリティがあり、読み手も主人公と同一化したかのように楽しい出会いと友情を育んでいく過程を味わえます。
多数の人物が登場するにもかかわらず見事に書き分けられており、いずれもキャラがしっかりと立っています。高い筆力の為せる業と思います。
ストーリーは、挫折からの復活・さらには強豪にリベンジするという明確な目標があり、どうすれば強くなれるのか? 成長できるのか? という点を読者も共有していけるので、応援していく気持ちを自然と持つことができます。
あとは、ヒロインとの関係がどうなっていくのか――ここも物語を引っ張っていく面白いところです。構成も、とても上手いと思います。
朝読小説賞に参加されているようですが、ぜひ教室で皆さんに読んでもらいたいと思える作品でした。この作品を読んで楽しく学べば、きっと、よい学園生活と青春を送れることでしょう。