普通だからこそ愛しい日常

なんてことない普通の日常。なんてことない学生達の普通の青春。その当たり前の中で繰り広げられる人間関係の、内側の部分を硝子細工のように丁寧に描いたお話です。
普通と言えば普通ですが、普通だからこそその普通は人それぞれ違うもので……価値感の違いや距離感の違い、同じものを見ていても思うこと、考えることは人によって変わるという当たり前を改めて実感できます。
特別な力がある人は出てきません。ただ普通の人達が普通に生活して、普通に思い遣り、普通に心配して、普通に恋をして、普通に大雑把に考えて、普通に悩んで、普通に生きています。
その普通の中でスポットライトをあてられた亜樹と光介の関係性。
互いに抱く想いの差と、考え方の違い……それぞれの人物を丁寧に丁寧に描いていて、読みながらこちらまで感情が引っ張られます。心理描写がとても緻密で、登場人物達が生きているなと思える深みがあります。メインの二人だけでなく、その周りにいる人達も生き生きとしていて素敵です。なにより本当にすごいのは、こういう人いるなあと思えるのですよね。作られた物語のキャラクターではなく、本当にそこに彼ら彼女らの生活があるんです。
是非この日常を覗いてみてください。ポカリと空いた穴を埋めてくれるように、きっとどこか一ヶ所は必ず共感できる部分があるはずです。