カラスの尾羽

空代

***

カラスの子

 変わる、ということに、人は意味を持たせる。意味など無い。それを証明するには、変わらないことが一番容易かった。


 「しっぽみたいだね」


 長い、長い髪。切ることは意味を持ち、だからこそくくってしまった。揺れるそれは確かに、何かの尾のようだろう。


 「カラスみたい」


 いつも着るのは黒い服だ。着ることが意味を持つから、意味を無くすためには着続けることが容易い。いつも黒なら、それに意味はない。


 「××××××××」


 意味はない。きっと自分はカラスの子で、この尾は尾羽だ。犬や猫の感情を示す尾と違うのも含めて、しっくりきた。空を飛ばないカラスの尾など、きっとただの識別記号以上の意味は無い。

 意味は無い。意味など持たない。ただ惰性のように、それでいい。


 どうでもいい毎日は、なにも変わらないのだから。

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