閉ざされた世界から飛翔してゆくヴィヴィッドな新王道ファンタジー

冒頭ではヒロインを救うヒーローという王道を押さえながら、展開する世界は教会が絡むダークめのシティアドベンチャー。
陰謀渦巻く狭き世界の中で抗う主人公たち。
闇を打ち破るべく彼らは戦い、その中で交わっていく人々に因って世界が徐々に広がってゆく。
更に章を追うごとにその世界は完全に開かれ、開闢の瞬間に立ち会えるドラマチックなストーリーだ。

………では前半は「ダークファンタジー」なのか?
否、それは飽くまでシリアスな物語を展開するためのエッセンスであり、一概には言えず。
丁寧な背景の描写は立体的に描かれ、リアリティーさえも享受させてくれる作者の美しい文体には只管と舌を巻くばかり。

一文一文が世界に「色」を与えてくれる本作は、個人的にだがヴィヴィッドに新たな王道を構築したファンタジー作品であると思う。
今後の新たなステージでも彩られたものになることが期待できる作品だ。

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