■タイトルからインスパイアされてみる 2

1 で徒然に書いていたら、超能力者っぽい話しになったが、ホームズという名前の雰囲気がでていなかったので、すこし書き足してみる。


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「ねぇ、その異世界……、生きたまま行けるんだよね?」

少年の目がきゅっと縮まったのが見えた。羊を思わせる四角い虹彩に変わる。

「なぜ、わかった?」

「簡単だ。あんたはぼくがはいってきたとき『お客さん。なんか用?』と訊いてきたからだ」

「それがどうした?」

「あんたはバカらしいな。もし本当の不動産屋なら、こういうはずだ……」


「どんな物件をお探しですか、とね」


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ホームズらしさが出た。


が、それまでだ。これはこれでおもしろそうだが、「不動産」からまた離れようとしている。あくまでも不動産の話で、おもしろくするべきだと考え直す。

そこで 話しをバックする。


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用事もなくなったので、ぼくは元に戻ることにした。ポケットから勾玉のようなポーションをとりだすとぎゅっと握りつぶした。ポーションはぐにゅっとひね曲がったかと思うと、パーンと破裂した。

その瞬間、ぼくは自分の世界に戻ってきていた。

目の前の路地にちいさな間口の不動産屋があった。

「シャルロッテ不動産」

あぁ、わかっている。ここは立地は最悪だし、規模もしょぼい。

だが、絶対にお客が望む物件を探しだす不動産屋は、うちしかない。

だから、訳ありのお客からの依頼がひっきりなしだ。

ドアをくぐると、奥からすぐに声が聞こえた。

「おかえり。シャルロッテ」


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ここで相棒を出すとなると、主人公をホームズにしたのだから、相棒は当然 ワトソンだ。

手塚治虫先生は「三つ目が通る」で「写楽保介」の相棒として、「和登さん」とうまくもじった。

こういう言葉遊びができないものか?。

英語で Watson  発音で似たようなものはないかもじれるものはないか 

Watsun  → watt SUN ワット数レベルの太陽 ともじるか?。

太陽のように天真爛漫だが、決して明るくないキャラ。 でそういうあだ名。悪くないか。


いや、What's on はどうだ。どういう意味があるのか。ネットで調べる

What's on ?(何事が起こったのか?)

「ビンゴ!!」

これだ。


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ドアをくぐると、奥からすぐに声が聞こえた。

何事か起きたかい? What's on 。シャルロッテ」

「なにもなかったよ。ホワットソン」

正面に、ひょろりと痩せ細った少年ホワットソンがいた。本当は違う名前なのだが、寿限無のようなとんでもなく長い名前のため、あだ名で呼んでいる。こいつは、なにかというと「何事か起きたかい? What's on 」と訊いてくる上、発音がガネーシア聖域のなまりなので、「ホワットソン」にしか聞こえない。だから「ホワットソン」だ。

「うそだ、シャルロッテ。なにか君は企んでいる顔をしてるじゃないか」

「ホワットソン。きみは相変わらず人聞きがわるいことを言うね」

「人聞きもなにも、ほかに誰も聞いちゃいないよ。シャルロッテ」

ホワットソンとはいつも会話が微妙に噛みあわない。毎度のことだ。本当にそれは些細な、ほんの些細なかみ合わせのわるさでしかないのだが、あいにくボクはその微細な部分がいつも気に触る。

「まぁ、企んでいないとは言わないよ。ホワットソン。龍族の親父に、徒歩30分圏内、階層は30以上、激レアアイテム入手可能で 100万ギネルの物件がないかを訊いたら、えらい剣幕で追い払われたんでな」

「そりゃそうだよ。そんな物件、あるわけない。このシャルロッテ不動産でもそんな良案件扱ったことなんてない」

「でも、ぼくはそれが欲しいんだ」

「相変わらず、無茶ばかり言うな。シャルロッテ」

「ラピス聖域はどうだ。あそこのモナスヴァレーは条件があうはずだ」

「ダメ。あそこは、一番最下層までもぐっても、コッパーサファイアくらいしか手に入らない」

「ん、じゃあ、バルクル遺跡は?。あそこはゴールドクラスのアイテムがゴロゴロしてるぞ」

「シャルロッテ、あそこでどれだけの勇者が死んだと思ってる。あそこは五階層しかない。一番最初の階層からレッドドラゴンが群れで襲ってくるクレージモードな場所だ。ダンジョンというよりも、『墓場』だよ。あそこは」

ホワットソンがこちらのアイディアをことごとく潰してくることにうんざりしたが、彼の知識はまちがいない。彼がない、と言えば、それはほぼ間違いなく「ない」を意味する。それはこころから信用している。

「じゃあ、ファンダム聖域のポポラ渓谷は?。あそこなら30階層以上あるし、レアアイテムも、とびっきりすごいものが手に入る!」

「シャルロッテ。きみは知ってて言ってるよね。あそこの周辺の平原は、凶暴なゴーレムの種族がたくさん群れている上、抗争が絶えない。だれもがダンジョンに近づく前に餌食……」

そう力説しながら、ホワットソンが言いよどみ始めた。

「シャルロッテ?。君はなにをたくらんでる?」

「なぜ?」

「君の左の口角があがっている時は、ろくでもないことを考えているあかしだからさ」

「いやね、ポポラ渓谷のまわりのゴーレムをすべて排除すれば……」

「すべて排除すれば……って……、ゆうに一万匹はいるはずだ……」

ホワットソンは薄々、ぼくの意図を感じとったらしい。その証拠に眉間が笑っちゃうくらい、見事にひくついている。彼の種族の特徴で、ストレスを感じている兆候だ。

あまりにも強いストレスをかけると「脱皮」することがある、と聞いた事があったが、残念ながら、ぼくはまだ彼の「脱皮」をみたことがない。


「排除すれば、ほら、見事に条件に合致した物件になる……だろ……?」

ホワットソンは観念したように、ガックリ肩を落とした。脱皮は今回もしてくれなかったようだ。

「シャルロッテ……。きみはぼくが止めてもそれ、やるつもりだよね」

「さすが、相棒。よぉくわかってンじゃない……」


「『シャルロッテ不動産』はゴーレム一行には強制的に立ち退きしてもらって、理想のダンジョンをデベロップ開発させてもらうよ」


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なんてこと。不動産屋から「デベロッパー」になってしもうた。

まぁ、ぎりぎり「不動産屋」からはずれずに、プロローグができあがったので、これはこれで良し、という着地点にしたい。


このあと、シャルロッテの「おかしなもの」を見える「目」が威力を発揮するだろうし、ゴーレムは殲滅の憂き目にあうだろう。近づけないダンジョンのある「聖域」に暮らす人々と触れ合い、その苦しみや悩みを晴らしてあげることだろう。


もし彼女を「悪名」高きデベロッパーという設定で進めれば、ゴーレムだけでなく住人たちも戦々恐々とするだろうし、「天使の雷」という「二つ名」で呼ばれるほどの腕利きの勇者であるなら、人々のために、「良きダンジョン」を適正価格で分譲するだろう。


「不動産屋」を英語で「estateエステート」というなら、文字をもじって「エステーティシャン」という「職業」にしてもいい。


どうとでも広げられる「種」ができあがったのではないでしょうか。


で、最終的にタイトルをラノベ風に作ると

「異世界不動産 〜エステーティシャンダンジョン開拓師 シャルロッテ・ホームズのとんでも物件目録」

とでもして締めくくりましょうか。

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