タイトルからインスパイアされてみる

■タイトルからインスパイアされてみる 1

勝手にタイトルを作って、そこから作品内容を膨らませます。

今話題の「ない本」もおなじ発想ですね。こちらは写真をお題にした「大喜利」ですが、「勝手に作ったタイトル」からインスパイアされてみて、中身をひねり出す。

耳慣れたものと、それにはまったく噛みあわない、トンでもないものを組み合わせてみましょう。


たとえば、異世界になにかをくっつけてみる。

有名なところでは、異世界食堂・異世界居酒屋 等今現代どこでもあるものを異世界、と組み合わせることで、インスパイアされてみます。


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異世界交差点(人間交差点のようなヒューマンだったりノンヒューマンだったりするドラマか?)

異世界交換留学生(異世界から別の異世界の者が交換留学にきて、お互いの異世界の違いっぷりにとまどう話か?)

異・世界遺産(勝手に作った異世界の世界遺産を、あたかも本物であるかのように礼賛する話か?)

異世界SNS(異世界のSNS映えする景観を撮ればスキルがあがる世界での勇者?の物語?)

異世界死神手帳(そこに名前を書かれたら適当に異世界に送られる?「デス●●●」ではない)


なんかなんぼでも浮かんでくるやん。

おもろいか、どうかは知らんけどな。


■異世界不動産

このタイトルにインスパイアされたので、徒然に書いてみる。

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「そんな異世界ないですよ。勇者さん」

 なにも言わなくても、その龍族の親父の顔を見ているだけで、そう言いたいだろうことはわかった。おそらく呆れ返っているにちがいない。まぁ、龍族の顔色が緑に変わったのが、それを意味するのかどうかはわからないが、なんとなくぼくにはわかる。断られるのは、この不動産屋で10軒目だからだ。

 龍族の店員はふぅーっとため息をついた。口元の吐息に炎がすこしまじっている。もしかしたら半分怒っているのかもしれない。

「勇者さん。徒歩30分圏内に、ダンジョンの入り口があって、階層は30以上、その上激レアアイテムが手に入れられる異世界?。いや、そりゃあるにはありますが、そこに転移するには、最低3000万ギネルは必要ですよ」

「いや、ぼく、今もっているのは、100万ギネルだけなんで……」

「話しにならねぇ。ほかを当たってくれないかね。こっちも遊びで異世界転移の商売をしてるんじゃないんだ」

「す、すみません……」


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まぁ、よくあるパターン?、かな。

不動産屋らしく、壁やドアに、よくわからない物件が貼り出されているとおもしろい。ここらで興味をひくと、世界観がより強まるかもしれないと考える。


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ぼくはすごすごとその不動産屋から退散することになった。うしろを振りむいてもう一度、貼り出された物件を確認してみる。

『スライム・ゴブリン少なめのダンジョン近し。中級者以上向け。大型ドラゴン出現有 1500万ギネル』

『召喚魔法効果大のダンジョン 徒歩45分。召喚獣生息の谷、風の魔法で2時間の好立地。魔法使い・魔道士に最適 2000万ギネル』

さっと眺めただけでも、あまり勇者にむくような物件は見当たらない。特にお金のない勇者には……。


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ここでぼくは、どんなヤツなんだ?と考えて、人物描写を入れてみることにする。

情けない初心者なのか。人外の見た目なのか。結構歳くっているのか。それとも、ボクとは言っているが女なのか。

漫画のように絵で書かない分、適当に会話からはじめられるのはいいが、会話や世界観を通してキャラを特定していないと、読者だけでなく自分もキャラを見失う。

ここで、「書き出しからインスパイアされてみる 1」での「インプレッションつぶやき法」を駆使する。


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とても珍しい目をしている……。

むかしカニ族だったかサソリ族だったかの勇者に言われたことがある。

目の色か?と聞いてみたら、そいつは「いや、珍しい目だ」とはっきり言われた。それはどういう意味か聞きたかったが、ゴブリンたちのスープの具材になったため、聞けずじまいだ。

ぼくは物件が貼り出したガラスに自分の目を映してみた。なかではあの親父がこちらをいけすかない(まぁ龍族のオレンジの顔色がそうであればの話しだが)顔で見ていたが、気にすることなくじっと見つめてみた。

自分でいうのもなんだが、たしかに「おかしな」目だった。自分でみつめて、自分で引き込まれそうになる。そう言えば、むかしからお婆ちゃんには「おまえはじっとひとを見つめてはいけないよ」と言われてきた。父も母もいなくて、お婆ちゃんが女手ひとつで育ててくれて、結構甘やかされてきたが、ぼくが誰かを見つめてるところを見られようものなら、烈火のごとく怒られた。

「シャルロッテ!。シャルロッテ・ホームズ。あれほどひとを見つめちゃだめだと口をすっぱくして言っているだろ!」

そんな日は決まって食事が一品すくなくされていた。お婆ちゃんなりの「罰」らしかった。


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「目」からキャラをインスパイアさせて印象づけようとしたら、なんかこいつ「目」にすごいパワーがやどってるんじぇね?という展開に。まったくなんのパワーか考えてないから、作者はこのあとどうなるかは知らない。しかも不動産から「ホームズ」という苗字を捻りだしたとたん、シャーロックが浮かんで、そのままシャーロッテ→シャルロッテ、と変化。

この「ぼく」は、その瞬間、おんなになってしまった。

そうくれば、もうこちらの路線に話しを切るのが正解だろうか?。

異世界不動産 というタイトルから、話しが逸れはじめたがそれはそれでいいかと続けてみる。



どうしたものかと、ぼくは装備を確認しながら歩き出した。肩から背負った剣や腰に巻いた魔法弾2個、そしてもしかしたら家族代々伝わる詠唱魔法の本。これに何着かの着替えとシュラフがぼくの全財産だ。

あぁ、異世界行きのためのなけなしの100万ギネル....。そんなもの端からもってなんかない。


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おい、金ももたずに交渉していたのか、おまえ何者だと、自分で書いていて突っ込む。この一文で意外な展開にもっていければよかったのだが、そうもいかない。下手をすると手垢のついたただの英雄譚になってしまう。異世界不動産 というタイトルに内容を戻さないとダメなのではないか。

ということで、無理くりに「不動産」に戻してみる。


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そろそろ空も暮れてきたので、今日のところはここまでとして、野宿の場所を探すことにした。

街中でいい場所でもあればと、きょろきょろすると、すこし離れた路地にもう一軒不動産屋があるのに気づいた。

どうせ、すぐ断られるんだから、ちょっと寄ってみるか。

ふだんならそう思わない性格なのに、もう断られなれたせいか、ある種のすがすがしさともに即断した。

そこは本当にちいさな間口の不動産さんやだった。


中にはいるなり、その暗さに面食らった。

消灯していて営業していないのではないかと感じる暗さではない。

なにかがそこにとぐろを巻いて「邪悪」な意図をもって待ち受けているような、そんな空気感が部屋のなかを墨一色でベタ塗りしている。そんな暗さだった。 

だが一瞬ののち、ただの小さな事務所の光景にそれは変わった。

あぁ、また……。

ぼくはだれにも聞こえないようなちいさな声で呟いた。

ぼくの「目」がまたそれを捉えたのがわかったからだ。禍々まがまがしさに充ち満ちた空間の歪み。そしてその隙間からかいま見える「たくらみ」を含んだよこしまな「魔」。


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こうなると「珍しい目をしている」ではないな。

では、さきほどのシークエンスのセリフを前にもどって変更しよう。


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とてもおかしな目をしている……。

むかしカニ族だったかサソリ族だったかの勇者に言われたことがある。


    ■----------------------------先ほどからの続き--------------------------------■

そしてその隙間からかいま見える「たくらみ」を含んだよこしまな「魔」。

昔言われた、おかしな目をしている、というのは正しくない。本当は「おかしなものが見える」目をしている、だ。

あたりの気配に心を研ぎ澄ませる。そこにないもの、あってはならないものが、どこかにあるはずだからだ。

「お客さん。なんか用?」

ふいに正面から、ひょろりと痩せ細った少年が声をかけてきた。痩せ細ったというのは、控えめな表現で、病的な感じの肉付きをしている。かすかに精気を感じるので、死んではいないし、ゾンビや傀儡くぐつの類いでもなさそうだ。

「物件を探してるんです」

「そうですか。どんな物件をお探しです?」

少年の声がその外見とは裏腹にいやに弾んで聞こえたので、ぼくはさっきの不動産屋とおなじ条件を提示してみた。予算は半分の50万ギネルで。

絶対にあり得ないはずのリクエストのはずだったが、少年は即答してきた。

「あぁ、ちょうどいい物件がありますよ。お客様ついていますね」

「本当ですか?。50万ギネルですよ?」

「えぇ。50万ギネルで大丈夫。おつりがくるくらいです」

少年はカウンターからからだを乗り出さんばかりにして、物件の記載されたパピルスをぼくの前にさしだしてきた。

ぼくはそのパピルスに手を伸ばしながら少年に訊いた。


「ねぇ、その異世界……、生きたまま行けるんだよね?」

少年の目がきゅっと縮まったのが見えた。羊を思わせる四角い虹彩に変わる。

「ど、どういうことです。お客さん?」

ぼくは、ぼくの「おかしな目」に見えているものを、正直に列挙してやることにした。


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とまぁ、これでどんな感じの話しになりそうかの道筋ができました。

ここまでで、導入部はできた感じはあります。

だけど、これじゃねぇな。ありがちだな。ということで、本日はここまでで、もう一回練り直すことにします。

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