キャラクターからインスパイアされてみる

■キャラクターからインスパイアされてみる

キャラクターからインスパイアされてみる。


ぶっちゃけた話、魅力的なキャラクターさえ生み出せれば、話なんてなんとでもなる。

これは昔からよく言われている話だし、先日鬼籍に入られた「小池村塾」の主幹「小池一夫先生」の著書に詳しい。

いわく「キャラクターをたてろ」だ。

二次創作をしている人は、作者が創ったキャラクターが魅力的だからこそ、自分勝手につくったストーリーのなかに放り込んでも、ファンが思っているようにちゃんと動いてくれる、と身をもってしっているだろう。

漫画に近いラノベが小説と決定的にちがうのは、文章のうまい、下手、ではなく、実はここにある。

小池一夫先生曰く。

松本清張の名作「点と線」「ゼロの焦点」などは……。

古くさいな。今風に変更するとしたら、本屋大賞受賞作がわかりやすいか。

「蜜蜂と遠雷」はコンクールに挑む4人の若きピアニストたちの葛藤や成長を描いた青春群像小説

「64(ロクヨン)」わずか7日間で幕を閉じた昭和64年に起きた殺人事件を追う刑事たちの物語

「博士の愛した数式」記憶が80分しか持続しない元数学者と家政婦の心のふれあい

映画やドラマになった名作ばかり。読んだ人はどんな展開でどんなラストかまで語れると思う。

だが、主人公の名前は?、と聞かれても、容易にはでてこないはずだ。


だが、漫画の場合。古くは「北斗の拳」「あしたのジョー」「タイガーマスク」。あたらしいところなら「黒子のバスケ」「ちはやふる」映画公開中の「かぐや様は告らせたい」でもいい。

あらすじは?と聞かれても「は?」となるが、主人公は?、と聞かれて答えられない人はいない。

これが小説と漫画の違い。

キャラをたたせるということは、そういうことなのだ、と先生は述べられている。


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ラノベは後者に近い構造をもっている。ラノベは漫画やアニメとの親和性が高い。

なので、キャラさえ「たたせれば」なんとでもなるのだ。

おいおい、それが「この世」で一番難しいんだよーー。

えぇ。わかっています。


わたしは、主人公を荒っぽく分類4つにしました。

チャート図があればわかりやすいのでしょうが、以下の性質にわけられます。


1 元々すごい才能があって、その力で物事を解決する

2 元々は才能がないように見えるが、努力や覚醒などを経て、才能が開花し、物事を解決する

3 元から才能がないが、努力や覚醒もそれほどないが、そこそこ物になる

4 元から才能がないので、たいした努力もせず、身の丈にあわせて生きていく。


1 は「北斗の拳モデル」と勝手に名付けた王道中の王道「爽快感」優先パターン

「テニスの王子様」「ドラゴン・ボール」「ワンピース」など少年漫画によくあるパターン。

これがパワーではなく、天才的頭脳になると「名探偵コナン」「金田一少年の事件簿」等になります。みんな大好きパターンですよね。


2 は「はじめの一歩モデル」と勝手に名付けた「成長ドラマ」優先パターン

「ぼくのヒーローアカデミア」「弱虫ペダル」「ハイキュー」など読者と等身大の人間が、成長していく様が気持ちいい。これには本来、「1」で主人公になるべき憧れの存在がでてきます。

「北斗の拳モデル」のケンシロウの話の、ある意味後日談からはじまると考えるといいでしょう。

ケンシロウに憧れるパットが徐々に才能を開花させ、ついにはケンシロウのあとを継ぐ、という話を描いているパターンですね。


3 は「ダイヤのAモデル」と勝手に名付けた「等身大すぎる」リアリティ重視パターン

恋愛ものやスポーツものに多く。最終的に結ばれるか、うまくいけば全国大会出場程度までいける。共感を得ることができるし、なにせ等身大なので、嘘っぽくない。

「ただ」——。それ、おまえも経験してんじゃん。そんなのわざわざ読む必要ある?。

しかも、現実世界で「大谷翔平」「八村塁」「藤井聡太」「張本智和」「渋野日向子」等、今どきの若いヤツラが「現実離れ」していて、漫画や空想を超えてしまっているので、そんな「等身大」の話ではなかなか耳目を引きつけきれないかもしれない。


4 は モデル名を入れると炎上するので、あえて無視。

ま、日常系というのはこのパターンでしょうか。なにか行動をおこすかとおもいきや、流れに身をまかせて、それなりの結果や失敗に至るけど。またおなじ日常が次の日も……。

おもしろいとおもえる人。ここに特化して才能のある方、勝手に書いてください。


で、キャラクタを生かしてインスパイアされるとしたら、1か2しかないわけです(もう言い切っちゃう)。ただゲームライクな展開で主人公をプレイヤーに重ねるつもりなら、3が一番共感を得られるのかな。


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キャラクターからインスパイアされてみる


実は1と2は相反するようでありながら、同時に展開できるという合わせ技があります。

それを使うととても楽にキャラが立てられます。

つまり、自分はなんのものでもない、と思っているが、まわりは、主人公がすごい、と思っているパターン。

これは漫画的ですが、その具体例となると実は海外の映画によくみることができます。

「ハリー・ポッター」「マトリックス」がその典型でしょう。

おそらくワールドワイドを目指すとき、このパターンは馴染みやすいのかもしれません。


小池一夫先生曰く、キャラを立てるには「人に噂させろ」という常套手段を使ってみる。

主人公は能力者の片鱗すらないが、実はがとんでもないヤツと周りの人間が知っているパターン。

で、「実食」よろしく「実筆」と参りましょう。

アドリブなので、どこに話が着地するのかは、いつものように筆のむくまま。


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 この異世界で勇者として食べていくには、少なくともどこかのパーティーに加わらなければならないと聞いて、ジェノは公的に募集している団員紹介所にいくことにした。

 まぁ、予想していたことだが、ジェノが到着したときには、驚くほどの列ができあがっていた。だれも不敵な面をしている一癖も二癖もありそうな連中に見えるし、百戦錬磨のベテランのような余裕が満ちていた。しょせん自分のような初心者に毛も生えていないような、勇者見習いとは物がちがうのだろう。

考えればため息がでるが、こんな異世界で座して餓死するわけにもいかない。及ばずながらでもなにか食える「職」につくしかない。

 二時間以上ののち、やっと順番がまわってきて、ジェノはタコのような姿をしたクリーチャーの係員の前に立った。そのタコはちらりとジェノを見るなり、愛想をつかしたような顔をした。

「おい、あんた、ここはダンジョンでの戦闘要員の登録場だ。わるいが、事務員は別の日にやってるからそちらにいってくれないかね」

その横柄な態度に多少はむかっ腹がたったが、ジェノはにっこりと笑って「お願いします」と頭をさげることにした。正面のタコは隣の席のトカゲのような顔をした係官に肩をすくめてみせた。

あからさまに侮蔑がこもった仕草だったが、ジェノはあえて見ないふりをした。

「で、あんた、名前は?」

「それが……わからないんです」

「はぁ?」

さらに侮蔑を重ねられた。まぁ、当然といえば当然で、タコさんを責めるわけにはいかない。

「目覚めたら、この世界に放り込まれていました。ついでに記憶もなにもかも……」

「はは、それは気の毒だったな。こっちの世界にくる途中に、『メモリー・ロンダリング』に巻き込まれたらしいな」

「メモリー・ロンダリング?。それはなんですか?」

「なんかの力と引き換えに、なにかを失うっていうこの世界での、不文律だよ」

「弱ったな。おかげでなんにもわからないんですよ。ポケットにはいっていた紙片以外はなんの手がかりもない」

「気の毒だが、名前も名乗れないヤツは登録は不可だ。帰ってもらおう」


「ジェノ・マドラー」


ジェノは紙片に書かれていた名前を思わず口走った。

たぶん、それが自分の名前だと確信はあった。

その瞬間、あれだけごった返して、あんなにも騒々しかった登録所が水をうったように静まり返った。

二つ隣のブースで名前を書いていた人間の姿の係員のペンが、パキッという音をたてて折れたのが聞こえた。あまりの筆圧に堪えきれなかったのだろう。


「ジェノサイド・マーダラー……」

だれかが呟くのが聞こえた。いや、本人も意識せず口からいつの間にか漏れたという感じだった。口走った本人は思わず口元を押さえて、自分の行為をないものにしようとしていた。

ジェノは周りの空気が痛いほどに張りつめたのを感じたが、わけがわからなかったので、目の前のタコの係員に尋ねてみた。

「ぼくの名前……、たぶん、そうだと思う……」

タコの係員はすでにゆでダコのように真っ赤になっていて、今にも倒れそうな表情をしていた。だが、職務を果たそうとする矜持か、単なる興味心からか、重々しげに口を開いた。

「本当に、その名前が書いてあったのか……」

ジェノはポケットをまさぐって、その紙片をつかみ出すと、係員の前に広げた。

「ほら」

だが、目の前のタコの係員は目をつぶって見まいとしていた。それだけではない。あたりの係員、列に並ぶ募集員たち全員がそれを直視できない、近づきたくないとばかり、一歩も二歩もうしろにひいていた。

こうなると、さすがのジェノも不安にかられる。周りの人々を見回しながら、おずおずとした口調で訊いた。


「すみません。ぼく、誰に転生したんでしょうか?」


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さあ、あなたならどんな展開にします。もういくつもストーリーが湧いて出ていると思います。


■ロバート・ラドラムの「暗殺者(ボーン・アイデンティティ)」のパターンなら、

なにもわからないまま数々の刺客に襲われ、そのなかで次第に記憶を取り戻していく。

やがて、自分がとてつもない能力者で、異世界ギルドの暗黒面を知る影であることを知り、ついにはギルドを殲滅していくことになる。


■すべてを滅ぼすといわれた「歴」と呼ばれる亡者たちの襲来から、人々を救った英雄の名前を、彼は受け継いだ。ところが、実はこれはひょんなことで、服が入れ替わったことでおきた偶然。かくして無能力者ジェノは全能者として異世界を救う戦いにでむくことに。


■その名前はダンジョンの魔物を滅ぼすために、おなじかそれ以上の人々を犠牲にした勇者の名前。

その名は数世紀を経ても色あせることなく、人々のDNAに刻まれている。人々にも、そして魔物にも恐れられる滅びの二つ名をもつ男。彼の請け負うのは、どっちの滅びか……。


■伝説のスレイヤーの復活。だれもその活躍に期待するが、別の異世界では「幸いをもたらす厄介者」ちがう世界では「冴えない賢者」「残虐の野良天使」「精緻なる蛮族」「醜き慈しみ者」等々いろいろ呼ばれ、しかも評価がまったく違う!!。本物のぼくはどれなんだ。


■その名を受け継ぐものに送られし、『創痍の勾玉』。バーカンディ騎士団に入ったジェノは、なにかと仲間たちがその入手方法を聞き出そうとすることに気づく。それを手に入れれば、すべてのスキル、あらゆる魔法を使えるチート状態になるという。だが、実はその名を受け継いだ瞬間から命のカウントダウンがはじまる、それは命と引き換えの贈り物。この中のだれが自分を「生け贄」として差し出したのか……。


と、ストーリーが次々と湧いて出てくる。


でもなんか、キャラクターからというより、設定から、インスパイアされたという感じになってしまいましたが、キャラクターを定型から発想してみると、こんな感じでインスパイアされるようです。










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