自分色

都稀乃 泪

プロローグ

 私はいわゆる「いいこちゃん」だった。

 大人の言うことを大人しく聞き入れる、大人達の奴隷であった。

 しかし私はそれを悪いとは思わなかった。

 なぜなら、友情というものを生まれてこの方感じたことがなかったからである。


 それでも寂しくはなかった。

 大人達のなかにまぎれていれば、私には居場所があるように思えた。利用されているだけだと気づいていたけれど。誰かに必要とされるなら、それでもよかった。


 そもそも友情なんてものは馴れ合いでしかない。そんな価値のないものに時間をかける彼らが理解できなかった。


 そんなものに自分の時間やお金や労力を奪われるのは私には耐え難かった。


 入学式の日、「一緒に帰ろう」と誘ってくれた女の子は一ヶ月後のクラス会には呼んでくれなかった。



 友情なんてそんなもの。


 私にはそんなの要らない。必要ない。

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