第3話【食べ応えがありました】

 金髪姫バービーは一週間ぶりに家に帰ったが、父親はグースカ寝ていた。

 気配に気付いて目を覚ましたが、開口一番。


「遅ぇぞ、酒はまだか」


 金髪姫バービーの目が細くなり、スカートを掴む手が震える。お金を落としたから買えなかったと伝えたら殴られた。


「ホンット使えねーな!テメエみたいな愚図は帰ってこなきゃ良かったんだ!」


 父親が酒を買いに行くのに同行する。

 財布を出した状態で軽く体当たり。お金を落とさせる。また殴られた。

 拾おうと屈んだタイミングで、スロットが回る。お馴染みの音楽を軽快に奏でて。


 ー444ー


「お父さん、わたしもね、帰ってこなくていいって思ってるの。

 だから、一緒だね」


 父親は自動販売機に飲み込まれていった。


 少女はクスクスと笑っている。

 数年ぶりの笑顔だった。


「やっと当たりだよ、お婆さん」

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人喰い自動販売機 秋雨千尋 @akisamechihiro

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