窓の外にいる
―バンバンバンバン
ふと目が覚める。
耳元では爆音のメタルが流れ続けている。
もし寝てるときにも電話が鳴ったら…と考えたらめちゃくちゃ怖かったので、電話の音に気が付かないようにとイヤホンの音量を最大にしていたんだった。
これじゃ眠りが浅くなるのも当たり前だよねぇ。
自分の馬鹿な作戦に苦笑いをして音楽を止めた。
―バンバンバンバン
大きな音がして、音がする方向へ視線を動かす。当たり前だけど窓に背を向けたままの姿勢では、少しだけ視線を向けたところで何も見えない。
カーテンで窓は覆われてるし、見えたとしても外灯もない農道沿いの道は真っ暗だ。
―バンバンバンバン
私の背後…今寝ている部屋の窓。そこから音がしているように思える。
緊張で体が動かない。
電話は…窓際にある。
―バンバンバンバン
力いっぱい窓を叩く音が聞こえる。
頑張って部屋を出て、警察に電話する?電話を取る?でも、それで窓の外にいる異常者が硬いもので窓を割ろうとしたら?
―バンバンバンバン
音は響き続ける。
これだけ大きい音なら、近所の人が通報してくれるはず。
誰か早く助けて。
―バンバンバンバン
―バンバンバンバン
窓が叩かれている音が響く中、私は体を丸めて布団の中で縮こまることしか出来なかった。
寝ていたことに気がついて慌てて目を開く。
音はもう響いていない。
カーテンの隙間から入ってきた光で、もう朝だとわかる。
明るいなら怖くない。昼間なら警察が来るのも早いし。
意を決してカーテンに手をかけた。
当たり前のことだけど、窓の外には誰もいない。
なんだか悔しいので窓を開けて辺りを見回してみる。
異常者の手がかりがあるかもしれない。
でも、そこには何もなくて、ただ目の前に広がっているもさっと繁る伸びっぱなしの生け垣の葉っぱが開かれた引き戸に引っ張られて揺れるだけだった。
苛立ちを誤魔化すように勢いよく窓を閉めると、生け垣の葉っぱが何枚か挟まって部屋の中に侵入してくる。
窓に挟まった葉っぱをちぎるようにして取った私は、それを勢いよくゴミ箱に捨て、部屋を出た。
―ティロティロリン
電話が聞き慣れた音を鳴らす。お母さんからかな。
私はコウシュウデンワと表示されているディスプレイをスワイプして耳に当てた。
ブリキ屋さん 小紫-こむらさきー @violetsnake206
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