「レンジャー!」
何度響いたろう。何度口にしただろう。そのたった一言に生き様が刻まれる。
彼女たちが、彼らが、生き抜いたその様が。這い上がってきた、その眼差しが。
筆者の得意とする小気味よいテンポで繰り広げられるコメディ要素は、
この作品では間違いなく一服二服の清涼剤だ。出会えると、心底ほっとする。
この物語は、戦いだ。彼女たちが挑む、本当の戦い。
私たち読者はその戦いに、追従する。できるのは、それだけだ。
コメディと銘打ってはあるが侮ってはいけない。その過酷さには、読者さえ油断できないから。
自衛隊。その先にある、更に過酷な訓練を経てやっと、一握りの精鋭に与えられる勲章と誇り、レンジャー。
主人公アキラの視点で語られる文字通りの「地獄」は生々しく、作中ではたった一人も余裕のある挑戦者はいない。
一人、またひとりと脱落する仲間。教官からの怒号。泣き言も恨み言も、許されない。信念だけでは立ち上がれない、まさに地獄だ。何度も眉をひそめ、唇を噛み締め、読むのがつらくなることもある。そんな、この世の地獄。
この世界は、チートが存在する異世界ではない。紛れもなく、どこかであるかもしれない現実。今も、この瞬間も血を吐くような思いをして、喉を枯らしている、顔も名前も知らない「彼ら」がいる。ここには、彼女たちが、いる。
現実だ。本当に、こうして歯を食い縛っている、ひとたちがいる。それほどの。
ここで確かに生きている。ここで確かに、高みを目指す彼女たちがいる。
私たちは息を止めて、その背中を追っていくしかできない。
なんでそんなに頑張るの。なんで諦めないの。なんでそんなに、命を張って。
勇者も、魔法使いも、お姫様もいない。
ただここには――その身一つと大切なものを背負って走る、人たちがいる。
それがどれだけ――こうして胸を熱くするだろう。
その生き様を見届けた時、じわり胸の奥に広がるものの熱さに、どんな感情を描くか。アキラは、ミズキは、レンジャーになれるのか?脱落するのは誰だ?
駆け引きなんて一切なしの90日、見え隠れする珠玉の人間ドラマ。
油断するな、声を落とせ、息遣いも気を抜くな。そしてきっと、あなたも叫びたくなる。現代の勇者たちに、さあ、最敬礼を。
「レンジャー!」
主人公は誰もが応援したくなるような、明るく元気な女性自衛官です。憧れのヒーローに成りたくて、自衛官の中でも一部の精鋭しか参加を許されないレンジャー訓練に参加。返事は常に「レンジャー!」。待ち受けるは文字通り命がけの訓練と苛烈な理不尽。
3ヶ月の訓練を通して、バディとなるクールな女性自衛官との関係性の変化や、他の訓練生との軋轢、そして主人公の心の成長から目が離せなくなります。
登場人物も皆んな個性的で、凄く素敵でした。私は特に、旧知の上官が訓練時の鬼助教の立場から、時折素になってヒロインに声をかける時のギャップに萌えました。
少し調べてみましたが、作中で展開される訓練内容は実際に行われているものを基にしていて、恐らく文量と構成の関係で省略とデフォルメがあるのでしょう。訓練中の事故で命を落とされた方もいらっしゃる程に過酷で、参加前には家族に宛てて遺書を書くのだそうです。
本作は静岡県板妻駐屯地から富士の樹海で行われた訓練をモデルにしていると思われ、実在する組織をモデルにすることは、色々な考えをお持ちの方がおられます以上、表現についても相当の制約があったのではと推測します。また現実であるが故、訓練に命をかける行為そのものにおいても、人命の軽視に繋がりかねず手放しで賞賛することが難しくなります。そういった自衛隊が抱えるリアルの課題も作中では記者のインタビューの形で表現されていました。
自衛隊の中にはMOSと呼ばれる資格があり、レンジャーもその内の一つです。しかし、この過酷な訓練をやり遂げて資格を得たとしても給料が上がる訳でもなく、得られるのは胸に付ける徽章(きしょう)のみ。ですがだからこそ、そこには組織にとって強烈な尊敬の念と誇りが生まれるのかも知れません。
隊員達が葛藤や挫折を経て、レンジャーへたどり着くまでの過程を極上のエンターテインメントに昇華させたこの作品は文句なしに傑作です。
ただ今本作品を読み終わったばかりなのですが、まず一言。めちゃくちゃ面白いです!!
ハードル上げてしまうのはどうかと思いますが、めちゃくちゃ面白かったです!!
まず、レンジャー訓練という私が全く知らない世界が舞台であり、読んでいて色々知れたのが楽しかったです。
そして、フィクションならではのコミカルなシーンもあって思わずクスリときてしまう事も多々ありました。
それから、コメディとシリアスの波が大きくて、主人公や仲間達のピンチには本当に手に汗握り、心の底から応援してしまいました。
何より私が良いと思ったのは主人公アキラのキャラクターです。明るくて元気で放っておけなくて、思わず応援してしまう彼女はとても魅力的です。彼女がこれからどうなるんだろうと気になって、何気なく読み始めたのに、つい夜更かしして最後まで読みきってしまいました。
皆様も是非読んでみて下さい!
極限状態で臨む地獄の90日間。
ただそれを文字で読んでいるだけなのに、自然と息苦しさを感じるほどの過酷さが伝わってきました。
が、訓練の厳しさをただただ見せ付けるだけで終わらないのがこの作品。
明るく前向きな主人公アキラと、彼女とバディを組むことになったミズキ(読み:良い女)。そして個性豊かな男子学生と、まさしく鬼教官な助教たち。
心身ともに追い込まれ、時にぶつかりながらも次第に仲間として成長していくアキラたちに、涙腺がやられること間違いなし。
かと思えば急に笑いが込み上げてきたりするので、読者は大変忙しい。笑
それぐらい登場人物たちのキャラクターがしっかり作り込まれ、読んでいて楽しめるような会話文になっているのも作品の大きな魅力です。
女だ男だ、なんて言葉はこの場に無用。
彼らは皆「レンジャー」だ、と最後には拍手を贈りたくなりました。
素敵な物語ありがとうございました!
声が大きくて超ポジティブ、元気いっぱいの女性陸上自衛官・アキラ。
そんな彼女が、陸自屈指の精鋭部隊であるレンジャーを目指して、地獄の訓練に挑む物語です。
まず、アキラのキャラが明るくてすごくいい。最初の数話を読んだだけで、きっと誰もが彼女を好きになるはずです。
こんなに真っ直ぐな彼女が踏み込んでいく地獄とは、いったいどんなものなのか。
もうね、これがスッゴいんです。読んでるだけで冷や汗出てきます。
体力的なキツさはもちろん、教官たちの鬼の仕打ちによってヤバイくらいに心を折られ続ける。
よくもここまで、と思わずにはいられません。読みながら何度「頑張れ……!」と拳を握り締めたことか。
リアルな人間関係も見どころです。
最初はソリの合わなかったバディ・ミズキとの関係、男女間にあった軋轢。
過酷な試練を乗り越えていく中、いつしか芽生える仲間との強い絆。
キャッチコピーにある通り、笑って泣いて、心の震えるドラマが数多くありました。
個人的には、理不尽に厳しい教官たちの素顔とのギャップがとてもツボでした。推しは谷嶋教官です。
ラストはこれ以上ないほどの爽快感があり、素晴らしい物語を読んだという喜びがありました。
とても元気をもらえる作品です。すごく面白かったです!