第7話 もう後に戻れない世界へ

 そう、こちらの世界の食べ物を食べたら戻れないと聞いたことがある。


 さっき、たらふく食べたではないか!



 今いる所は本当に極楽なのか?

 確かに先ほどまでいた世界は現世的だった。


 いよいよ蓮の花の上にちょこんと座るような仏の世界に行くのだろうか......。



 だんだん山の上の光が人の頭のような、それも仏様の頭のような形になってきている。


 まさに“山越えの弥陀”ではないか!


 いやこれは夢だ、できすぎている!


 と目をこすり否定しても、どんどん リアルに弥陀様のような顔になっていく、


 と、横手から小さな光が左右に分かれ飛び出してきた。

  遠いがぐんぐんこちらに近づいて来る。



「跪きなさい」と守り人さん。


 なんだか本当にこの世のものでない神々しい光が近づいて来るので腰が抜けるように跪いた。



 その2つの光は人の形、やはり仏様のような...


 観音、勢至菩薩様?


 できすぎているが目の前に輝いてその姿で現れたのだ!


 茫然と、たぶん口を開いて頭真っ白呆けた状態になっていたであろう、


 その時お二人と目が合った、と思うとパーンと弾けるような音がして光の中に包まれた!


 何がなんだかわからないが身体が溶けるような、砕け散るような、けれども意識はある。


 身体がどんどん浮いてきて、お二人が山に戻られるのに引っ張られるようにぐいぐいと空を飛んでいく。


 何も考える余裕はない、弥陀様の中に吸い込まれるような勢いで速度を増していく。


 やがて光の渦の中に巻き込まれ、ハッと気づくと守り人さんと手を繋いで空を飛んでいる。



 明るい雲の中、 山も平原も弥陀様も見えない。




 さぁ~っと雲が晴れてきた。





 真っ青な空を一瞬イメージしたが、なんとも不思議な、色の黄色い見たこともない黄色としかいえない空間、



 空?地上?が見えてきた。


 大きな虹のようなアーチ、 川か道のようなもの、家並み、やっと人間がいそうな雰囲気だが全てが黄色に染まっている…


 夕焼けのひと時の、赤くなる前のような不思議な色合いだ。



「さて降りるとしようか」

 守り人さんが下に向かって飛び始めた。


 ジェットコースターのようだ。


 だが風を切る髪がなびくようなことがない。




 守り人さんの姿を見ると、なんと若くなっていて一度変身された時よりもより若々しく輝いて、黄色く光っているような、


 あれ?自分の腕も黄色い感じで服が変わっている。




 すごい速さで広い河辺のような所に降り立った。


 なぜか自分の姿を見ようと河へ走って行き、水に映して驚いた!


 自分だけど自分でないような、外国人のような格好で黄色く焼けたような肌、金色っぽくもある。


  服はちょっと柔道着のようだがふわふわと軽やかな生地感だ。


 足は裸足というか足の裏に薄く中敷きを貼っているような履物?がひっついている。




 なんとも、物語の世界に入っていった、まさに映画館で体験した臨場リアル映画の続きのようだ。




 守り人さんが近づいて来て、


「この世界はぬしが生まれる前にいた所だ」


 と言うではないか。



 ほう~面白くなって来た。


 自分が何者かがわかるのだろうか?

 生まれ変わりや霊界のことが本当にわかるのか、と急にワクワクしてきた。


「ははは、本来のぬしに戻ったな」と守り人さん。


「ここは霊界ということですか?私の魂の故郷?」と聞く。


「そうだ。我やぬしの故郷だ、さあ家に帰ろう」 と、また守り人さんが手を差し出した。



 今度は地上から数メートル浮き上がって道沿いに飛んで いった。

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パラダイス・シフト 灯鳥 《とうと》 @touton

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