都会の片隅に消えて行く者たちへの鎮魂歌

霊能者や霊媒師を主人公にした物語は沢山ありますが、身体に霊を憑依させ酒を飲ませて未練を断ち彼岸へ送るというのは、なかなか珍しく斬新な設定だと思います。

洒脱な文体とハードボイルドな雰囲気が魅力的ですが、主人公に憑依するのはいずれも悲しい事情で死に至った者たちばかり。
明日の朝刊の三面記事に小さく載って終わってしまう、都会の片隅で儚く消えて行く名もなき人々への鎮魂の思いを込めた、作者の優しさが伝わって来るような作品だと思いました。

それにしてもヴァイスヴァインショルレと粉吹き芋のバターソテー。
自分はあいにく酒にも料理にも無知な人間ですが、字面を見るだけで美味しそうです。