お話のテンポも良く、アスター side とアリッサム side で視点が切り替わり、より感情移入のしやすい作品です。
小説を書く上でも勉強になりましたので、もっと色々な方に読んで頂きたいと思いました。
アスターとアリッサム――二人の間には、様々な問題が立ちはだかります。
歳の差、性別、身分――更に教師と生徒という関係。
そして、アリッサムの兄・ジンジャーの嘘――
でも、そんなのは言い訳です。
一番の問題は、アスターの鈍感力でした。
一途で積極的に迫ってくるアリッサムに、アスターの理性はいったいどうなるのか?
そして、衝撃のラストシーン。
これを読んで、皆さんも裏切られてください。
教師と生徒、同性、貴族と平民などなど、作者のayaneさんが得意とする要素が詰め込まれた恋愛です。
恋愛といっても様々あるのですが、イケメンやある程度、神様に贔屓された男女でなければ回せない話ではない所に、人同士の絆や感情を描ける作者の強みが活かされていると感じさせられます。
読み進めて行くうちに、私は幸福について考えさせられました。
このハードルがなければとか、この行き違いがなければとか、そういうものが浮かんでは消えていくのですが、最終的に私の中に残ったのは、それらが全てない、誰もが我慢する必要のない世界が幸福なのではなく、皆がちょっとずつ我慢すれば済むくらいの世界が幸福なのだ、という事でした。
でも、その「ちょっと」が人によって様々で、主人公のアスターも、生徒のアリッサムも、親友のジンジャーも、皆一様に違っていて、だからこそ惹かれます。
相手が悪いとは誰も言っていないし、自分が悪いといいだす登場人物もいない、優しい人達だからこそ掴んで欲しいハッピーエンドがあり、一気に読めます。
簡単な一言で済んでしまう幸せが、とても難しく、だからこそ大切で、優しい物語です。
久しぶりに再会したアリッサムは可愛すぎる幼馴染。
アスターは奔放な振る舞いをするアリッサムに振り回されながらも、スレスレの所で自分の本当の気持ちを二重三重どころか四重五重と殻を被り、お主はマトリョーシカか! と突っ込みたくなります。
それはもうヤキモキすること間違いなしです。
でもアスターの思考も解らなくはない。
幼馴染みとはいえ、家柄の違い、年齢差、教師と生徒という関係。
もうこの際性別なんてどうだって良いじゃないの、という事も、この世の今の時代だから声に出せることかも知れません。
と、庇ってみたけれど、やっぱり……
様々な思惑に翻弄される二人。
微熱も積み重ねるとそれなりの熱量になるものです。
こちらはそんなお話。
意外過ぎる結末とある意味爽快とも言えるエピローグまで、是非、見守ってあげて欲しいです。