SOR.05

 UAZ-469多用途車は駐機場を爆走する。その助手席では、佳美がスマートフォンを耳に当てて通話していた。

「ニアヴ01、直ちに離陸準備!」

〔そりゃ無茶だ! 今、歩兵科の連中に囲まれてるんだ! 一体何をしでかしたんだバ艦長!〕

「しでかしたんじゃない! 嵌められたの! とにかくエンジンを回してすぐ離陸できるようにして!」

 すると突然、直弥が急ハンドルを切った。それにより、シートベルトをしていなかった佳美は直弥の右肩に激突する。

「何をするんだ馬鹿野郎!」

「仕方ないだろ! 事故るよりはマシだろうが!」

 振り返れば、そこには地上走行(タキシング)するイクサチラン共和国連邦製艦上戦闘機・ウェスティンハワード F-11B スーパータイガーが急停止していた。


 滑走路へと向かう大型輸送機・アンドレーエフエアクラフト Ан-124-200 ルスラーンの機首の下を掠め、ヘリポートへと向かう。




 SH-60K シーホーク、ニアヴ01の周りに、小銃や機関銃を手にしてボディアーマーを着た歩兵科の生徒達が取り囲むように立っていた。その近くには、ポルスカ共和国製装甲兵員輸送車・クントーモーターズ ヂク-3が止まっている。

「なぁ、何で同じ学校の対潜ヘリを警戒させられてるんだ?」

「さぁ? 教務会の指示だから、無視するとこの大陸から追放されるよ」

 そんな会話をしている生徒達の視界に、1両の爆走するUAZ-469多用途車が入ってきた。

「何だ? トイレか?」

 しかしそこへ、本校生徒会から指示が出た。

〔その車を撃て!〕

「何だって!?」

〔これは教務会からの命令だ! そいつらは、教務会に楯突いた連中だ!〕

 それを聞き、歩兵科の生徒達は一斉に銃を構えた。ヂク-3装甲兵員輸送車の車上に固定された12.7mm口径の重機関銃・アベレージダイナミクス M312の槓桿が引かれ、各種小銃や機関銃が火を噴く。


 それによって、UAZ-469多用途車は穴だらけになる。佳美は再び車両後部から武器を選び出し、後方の幌を開いて選んだ支援小銃・ベッセル&コクツェーユス M27IARを構えた。C-MAG百連円形弾倉(ドラムマガジン)によって、次々と5.56×45mm SS109実演弾が放たれていく。

 佳美の弾幕により、次々と生徒達が倒れていく。

「野郎、ふざけやがって!」

 M312重機関銃から12.7×99mm BMG実演徹甲弾が放たれ、それらによってUAZ-469多用途車のボンネットが吹き飛び、右前輪が脱落した。UAZ-469多用途車はコントロールを失い、派手にスピンしながら止まった。その遠心力によって、佳美は地面へと放り出された。

 地面に投げ出された佳美は、なんとか起き上がる。そして、気付いた時にはヂク-3装甲兵員輸送車の車上に設置された防楯付銃座が彼女を向いていた。

「……!?」

 彼女は覚悟する。が、直後ヂク-3装甲兵員輸送車が爆発炎上した。振り返れば、直弥がノール王国製使い捨て式ロケットランチャー・ナンモラウフォス M72E8の発射機を構えていた。




 2人はSH-60K シーホークに乗り込む。

「おいバ艦長! 何をしたらあんな事になるんだ!?」

「後で説明するから、今は離陸して! 急いで!」

 佳美は叫びながら、自衛用として機体左側に固定された四国重工 74式7.62mm車載機関銃の槓桿を引く。そして押し金を押した。

 迫りくる追っ手を機銃掃射で薙ぎ払い、SH-60K シーホークは離陸した。




 本校から逃げるように離陸したSH-60K シーホークは、洋上を飛んでいた。

「で、何をしでかしたんだ?」

 機長の守田 珠が尋ねる。すると佳美は、ため息をついた。

「本校の連中、私達が違法的に〈ティルピッツ〉を攻撃したと言ってきた。その上、こっちの言い分に聞く耳持たず。で、辛抱堪らず逃げ出してきたって訳」

「……相変わらずのバカっぷりだ。そんな事すりゃ、あんただけじゃなくて戦隊全体が――」

「既に512水雷は謹慎処分が決定していた。俺が思うに、あの艦は何かしらの極秘事項を抱えていた。で、俺達第512水雷戦隊が遭遇、攻撃をした。その機密を知っていた本校は、それが漏れ出すのを恐れ、俺達512水雷に口封じをした。そんな所だろうよ」

 直弥が悟ったかのように言う。そして、機内に沈黙が流れた。

 直後、機内に甲高い警告音が鳴り響いた。

「ミサイルアラート! Su-27だ!」

 副機長の直誓が叫ぶ。即座に珠が自己防御スイッチを押し、チャフとフレアをばらまきながら急激な旋回をする。


 発射されたAAM-5短距離空対空ミサイルはSH-60K シーホークへと飛翔する。しかし、ヘリコプター特有の機動により、ミサイルの旋回は間に合わず、外れてしまった。

〔下手くそ〕

〔何よ! 今のはミサイルのシーカーが悪いのよ!〕

〔まぁまぁ〕

 黄緑色のSu-30MKB ストライクフランカーはハイヨーヨー旋回、再びSH-60K シーホークに襲いかかる。

〔フォックススリー!〕

 Su-30MKB ストライクフランカーに搭載された30mm 9A-4071K機関砲が火を噴いた。

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