SOR.02

 あかいし型防空巡洋艦3番艦CGH-707〈たてしな〉。俗に言うところの「イージス艦」である。

 艦首に2基、艦尾に1基の単装砲を搭載し、合計96セルのMk41垂直発射機、2基のMk141四連装発射機、1基のMk29八連装発射機、2基のHOS-303三連装魚雷発射管、2基の20mm ファランクスMk15mod1B近接防御機関砲、更に2基の四連装対魚雷デコイ発射管、1基の静止式対魚雷ジャマー発射機を搭載する重武装の戦闘艦である。艦後方には中型ヘリコプター3機を駐機可能な大型のヘリ格納庫を備えている。しかし運用されるヘリコプターは2機のみの為、1機分のスペースは荷物置き場と化している。

 イージス艦である以上、高度な電子装備も備えている。前部鐘楼は電波反射性を考慮した傾斜設計で、その四隅を切り落としたかのような場所に4基のIN/SPY-1DVアクティブ電子走査アレイレーダー、鐘楼上部にはOPS-28E対水上レーダー、NOLQ-2B電子戦システム、艦内にはイージス9自動防御システム、OYQ-102対潜戦闘システム、IN/SQS-53C対潜ソナー、OQR-2曳航ソナー、Mk20主砲管制装置を搭載している。

 これだけの重装備となったため、基準排水量は17370t、満載排水量は24260tと、重巡洋艦クラスの大きさとなった。


 そんな大型艦を中心とする「敷島学園 第4艦隊 第512水雷戦隊」は、アトランテ大陸内海の公海領域の大型艦に攻撃を行おうとしていた。

「全く、勝手に戦闘をおっ始めるなっつーの」

「艦長の癖に艦橋に居ないのが悪いんだよ」

「常に艦橋に居ろって? なんつーブラックな部下だ」

 真っ赤なカバーがかけられた椅子に座った[艦長]と背中に書かれた救命胴衣を着た茶髪ロングの女子生徒に対し、隣の椅子に座った副長が言葉を返す。

 彼らは今、艦橋の隣に設置されたFIC(艦隊司令部)に居た。ここには大型ディスプレイが複数設置され、自艦や他艦のCIC(戦闘指揮所)のディスプレイや友軍からもたらされる戦術情報が表示される。

「右対空・対水上戦闘、攻撃始め」

 艦長がそう口にする。


 それに、CICのメガネ男子生徒の砲雷長が応えた。

「CIC指示の目標、EA(エヴォルブドシースパロー個艦防空ミサイル)、SSM(SSM-1B艦対艦ミサイル)攻撃始め」

「目標01、EA指向、前甲板VLS解放、発射用意」

「目標02、SSM指向、1番発射用意」

「撃てぇ」


 〈たてしな〉のMk41垂直発射機から1発のエヴォルブドシースパロー個艦防空ミサイルが、Mk141四連装発射機から1発のSSM-1B艦対艦ミサイルが発射される。2発のミサイルはロケットブースターで加速、目標へと針路を取り、SSM-1B艦対艦ミサイルのロケットブースターが空中投棄される。


 1機の戦闘爆撃機・ジールサンティ F-4F/ICE スーパーファントムⅡのコクピットで、後席WSO(ウェポンオペレーター)が受動警戒スコープを見て、前席パイロットに警告した。

「ハンカ、2時方向から強力なレーダー波。ブレイク、ブレイク!」

「こっちは重武装なんだ! 無茶だって!」

 主翼下の2本の増槽を投棄する。しかし、それでも主翼には2発のAS.34 コルモラン空対艦ミサイルが、胴体下には2発のAIM-120C アムラーム視程距離外空対空ミサイル、1基のIN/ALQ-184電子妨害ポッド、1基の30mm GPU-5/Aガンポッドが吊るされている。電子妨害開始、チャフを散布する。同時にスロットルを[A/B]へと入れ、加速上昇、ハイループを開始する。


 しかしエヴォルブドシースパロー個艦防空ミサイルは正確にF-4F/ICE スーパーファントムⅡへと誘導される。そして、近接信管を作動させた。


 同じ頃、4発のSSM-1B艦対艦ミサイルは海面スレスレの低空飛行で大型艦へと迫っていた。大型艦は大出力の電子妨害を開始、チャフロケットを発射して電波虚像を作り出す。しかし、SSM-1B艦対艦ミサイルの熱源シーカーは大型艦のシルエットを捕捉、ポップアップ上昇、大型艦へ急降下する。

 大型艦に搭載されたMk.49二一連装近接防御ミサイル発射機がRIM-119 RAM近接防御ミサイルを発射、20mm ファランクスMk15mod1A近接防御機関砲も弾幕を張る。

 これによって、2発のSSM-1B艦対艦ミサイルが迎撃される。しかし、残りの2発は弾幕をくぐり抜け、大型艦の巨大な煙突に直撃した。


「戦果確認、2発命中。目標、速力低下!」

 〈たてしな〉CICのレーダースコープを見張っていたメガネ女子生徒が叫ぶ。

「狭い部屋の中で叫ばなくていい」

「でも、その方が勢い良くあるでしょう?」

「あんなのただの射撃訓練だ、気持ちが上がらん」

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