SOR.06
30×165mm 9A-4002実演弾を受け、SH-60K シーホークのテイルローターとエンジンが火を噴く。
【Warning, warning.】
警告音が鳴り止まず、機体は駒のようにクルクル回る。ジャイロコンパスもクルクル周り、姿勢傾斜計の表示が暴れ出す。そうしている間に、どんどん高度が落ちていく。
4人は強い遠心力により、何も出来なかった。動くことも、声を出すこともままならない。遠心力でドアに押し付けられている佳美が、チラッと窓の外を見る。そこには、海面が迫っていた。
そして、SH-60K シーホークは墜落した。
〈たてしな〉の戦闘指揮所(CIC)では、早期警戒管制機・パシフィックエアロプレーンプロダクツ E-767MZ アマノサグメと戦術航空科 2年666組との無線を傍受していた。
〔スプラッシュ! 目標撃墜! 墜落地点はER-2904――〕
〔こちらグレースワッチ。伝える必要は無い。直ちに帰投せよ〕
〔どういう事? 同じ学校の生徒が乗ってるかもしれないのに、見殺しにしろって言うの?〕
〔命令だ、よく聞け。救難捜索の必要は無い。直ちに帰投せよ〕
〔しょうがない、セクメト25、エリア11へ帰投する〕
そのやり取りは、〈たてしな〉他、第512水雷戦隊の僚艦にも聞こえていた。
「桑原、冗談だよね?」
1人の女子生徒が、[砲雷長]の桑原 武生に尋ねる。
「伊東、相手はグレースワッチ、第4分校 航空管制科 3年811組のカーミラ=ハリスだ。1年の時から常に彼女の指揮を受けていただろう」
武生が応える。そして、指示を出した。
「〈たてしな〉CICから〈かざなみ〉、救難捜索(SAR)を要請する。こちらも、護衛のヘリを上げる」
しかし、〈かざなみ〉戦闘指揮所(CIC)に却下された。
〔こちら〈かざなみ〉CIC。それは出来ない〕
「どうしてだ!? あのヘリにはうちの艦長と副長が乗ってるんだ! パイロットの2人だって――」
〔こちら〈かんだち〉CIC! 本校から全分校への指令を受信! 読み上げます!〕
その内容に、第512水雷戦隊の全員が戦慄した。
〔『第512水雷戦隊が反乱を起こした。全分校はあらゆる戦力を持って、これを撃破されたし。なお、ここに属する生徒の生死は問わない』〕
「何だよそりゃあ……」
「SPY(スパイ)レーダー、目標探知! 右040度、数24、高度2000、速度毎時800、真っ直ぐ向かってくる!」
武生達が絶句する中、〈たてしな〉に搭載されたIN/SPY-1BVパッシブフェーズドアレイレーダーが多数の飛行物体を探知した。
「敵味方識別装置(IFF)確認、味方で無ければスタンダード(SM-2)をぶっぱなせ」
「IFF発信、返答受信、第11分校 テティス飛行隊!」
「テティス? 敷島一の敵艦キラーじゃないか」
直後、警報が鳴り響く。
「レーダーアラート! ロックオンされた!」
「さっきの指令の直後にこれかよ! 各員、戦闘配置! 右、対空戦闘用意!」
4隻の防壁が全て閉じられ、射撃管制装置が起動する。
「テティス隊、空対艦ミサイル(ASM)発射! 数96! 初弾到達まで80秒!」
「対空戦闘、CIC指示の目標、SM-2攻撃始め! 主砲、CIWSスタンバイ! ECM開始、デコイ射出!」
「SM-2発射よぉーい、ってぇ!」
「発射、バーズアウェイ!」
〈たてしな〉のMk41誘導弾垂直発射機から、次々とRIM-156A スタンダード2-ER艦隊防空ミサイルが発射されていく。
それによって、〈たてしな〉は白煙に巻かれる。
〔全く、対艦攻撃は海面スレスレの低空飛行から雷撃の如く対艦ミサイル飽和攻撃がセオリーなのに、それをやらせずにこんな高く飛べなんて、うちの分校の教師と分校生徒会はバカか?〕
〔おかげで、こんな早く見つかっちまってる。見ろよ、艦対空ミサイルの噴煙だ〕
〔これじゃ、半分も到達せずに迎撃されるな〕
次々とRIM-156A スタンダード2-ER艦隊防空ミサイルが迫り来る空対艦ミサイルに命中していく。しかし、それをくぐり抜ける空対艦ミサイルもいる。
「迎撃成功(マークインターセプト)! 残存目標(サバイブターゲット)、残り62!」
「EA(エヴォルブドシースパロー)攻撃始め!」
「シースパロー発射よぉーい、ってぇ!」
「発射、バーズアウェイ!」
「〈かげつ〉、シースパロー発射、〈かんだち〉、〈かざなみ〉も発射確認!」
4隻が続々とRIM-162A エヴォルブドシースパロー個艦防空ミサイルを発射、迎撃を続ける。
しかし、超音速で迫り来るХ-31А クリプトン空対艦ミサイルやASM-3空対艦ミサイルは迎撃をくぐり抜けていく。
「目標、さらに近付く!」
「主砲、攻撃始め!」
「弾種・対空、撃ちぃ方始めぇ!」
「主砲発砲!」
[砲術員]の辻久 仁雄が主砲コントローラーを取り出し、トリガーを引く。
〈たてしな〉に搭載された、3基の5インチ Mk45mod4単装砲が旋回、空薬莢を放出して砲弾を撃ち出す。他の艦も5インチ Mk45mod4単装砲での射撃を開始、20mm Mk15mod1B近接防御機関砲も20×102mm徹甲実演弾をばら撒く。
しかし、数発の空対艦ミサイルは4隻へと迫り来る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます