第2話 少女の目覚め

「連れて帰ってきたはいいものの……どうしたらいいんだ?」

長から預かった少女をおぶって、やっとの事で家まで帰ってきた。

重さは一般的な女の子レベルらしく、俺でもなんとか運べたけれど。

「ここまでしても起きないなんてな。本当に動くのか?」

そう思って俺は彼女の体を眺めてみた。

服は一般的なものを着ていて、見た目だけなら完全に女の子だ。

ただ、髪の色は銀髪で、日本人という見た目ではない。

肌もよく見ると俺のより白っぽい。

白人種に近い造りなんだろうか。

「スイッチなんかが着いてたりするのか?」

ロボットなら、レバーやスイッチが着いていて、それを切り替えれば目覚めるなんてこともありそうなものだ。

守り抜くことが条件と言われても、動くなら動かしてみたい。

人型だし、それなりにコミュニケーションは取れるかもしれない。

いつまで一緒にいることになるかは分からないんだ。

その部分は大事だろう。

俺は、一人暮らし故に、誰かがいる安心感を求めていたのかもしれない。

布で隠れていない腕や脚にはスイッチのようなものは無い。

となると、服の中にあることになるが……。

「さ、さすがにそれは……な」

ロボットといえど、見た目が女の子だ。

それもかわいい系のやつだ。

服を脱がすなんてことはできな……。

そう思った瞬間、彼女の薄っぺらい服を扇風機からの風がひらりとめくる。

彼女のおへそが丸見えだ。

「ロボット……だもんな……」

俺の心は一瞬で傾いた。

俺はゆっくりと、彼女の服をめくって行った。

これは別にやましいことをしているわけじゃない。

彼女の目を開かせるための手段として必要なことなんだ。

そう言い聞かせながら、上の服を胸の下まで上げた時。

「あ……あった」

いわゆる谷間の部分。

そんなに大きい谷間では無いが、確かに彼女を女の子だと証明するブツとブツの間にスイッチが着いていた。

上半分か下半分を押してカチカチするタイプのスイッチだ。

俺は恐る恐るそのスイッチの上を押してみる。

カチッ

気持ちのいい音がなったその数秒後、彼女がゆっくりと目を開いた。

その瞳は澄んだ水色で、本物の人間のものと変わるようには見えない。

クラスにこんな女の子がいたら、即告白してしまっていただろう。

少女は俺をじっと見つめると、無表情のまま口を開いた。

「はじめまして、私は0れい-329さんにーきゅー機。私を作った人は私の事を玲乃れいのと呼んでくれました」

「玲乃……か。俺は裕也、よろしくな」

俺が握手をしようと手を差し出したところ、玲乃はその意味がわからなかったらしく、首を傾げている。

情報がインプットされていないんだろうか。

「それより、私の家の方向はどっちですか?」

玲乃はそう言いながら玄関の方へ向かう。

まさか、作られた場所に帰るつもりなんだろうか。

それは困る。

俺の役目は、彼女を守り抜くこと。

家に返したなんてことになれば、その役目を果たせなかったことになるかもしれない。

「ま、まってくれ!」

俺は必死て玲乃を引き止め、彼女を預かることになった経緯を説明した。

すると納得してくれたようで、大人しくリビングに戻ってくれた。

初日からこれだと、あとが心配になってくる。

俺は彼女と上手くやって行けるだろうか。


彼女に色々な質問をしてみた。

誰に作られたのか、どうして預けた先が俺なのか、そもそも君はなぜ作られたのか。

でも、「わからない」だったり、「知らない」だったり、まともに答えが返ってきたものはほとんどなかった。

ただ、「食べ物で何が好きか」という質問に対してだけは、目を輝かせて「オムライス!」と答えた。

子供っぽいというか女の子らしいというか。

見た目が女の子なだけあって、性質も女の子に寄せてあるらしい。

表情がほとんど変化しないからそういうものなのかと思っていたが、ただ単に感情の起伏が穏やかなだけらしい。

まあ、そういうことなら今日の晩御飯はオムライスにしよう。

ケチャップオムライスでいいだろうか。

彼女のことが少しだけわかったような気がする。


しかし、ロボットでもご飯は食べるんだな。

ドラ〇もん的な造りなんだろうか。

なんだとしても、久しぶりに誰かと食べる夕食に、内心ワクワクしている俺であった。

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機械仕掛けの少女のメモリア【オロロジリア】 プル・メープル @PURUMEPURU

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