【あとがき】これはハッピーエンドではない
人を騙し続けることは呪いに近しい、という前提のもと、明言していない「騙し」が作中に一つある。と、申しておくのがフェアというものだろう。誰がだれに対してなのか、本あとがきのタイトルを見てぜひ推測してほしい。
さて、読者諸賢はすでにお気づきかと思うが、今回キャッチフレーズに書いた「受賞内定作品」というのは、全くの嘘である。あらすじの一切も、でたらめである。
そんなうまい話は転がっていまい。転がっていても、私のもとにたどり着くわけもない。私はそんなに運に富んだ生活はしていないし、仮に手に入れたとてそもそもこんなに大っぴらに言うわけもない。
つまり。
つまりどういうことか。
この作品のギミックについて解説しよう。
この作品の本質は、結果発表後に開示される。
もし受賞した場合、それは読者諸賢及びカクヨム運営側が「この作品を評価した」ということになる。騙す、というテーマにおいてよく書かれていると感じた人間が多いから受賞した、という式だ。うそが真になるわけだ。
しかし、もし受賞しなかった場合、それは読者諸賢が「この作品の存在に騙された」ということになる。「そんなうまい話はあるまいて」と思いつつも「もしかしたら本当に?」という疑念が常に付きまとうであろうあなた方の心中は、嘘をつけない。
( ——というレベルの作品を書けているといいのだが―― )
つまり、あなたがこの小説を読んだ瞬間から、いずれにせよ、騙しにおいて私は成功したことになるのだ。
さて。
人を騙すは捨身にて。
賢明な読者の皆さまと、カクヨム運営に嫌われないといいと願いつつ。
結果や如何に。
2019年7月某日 枕木きのこ
人を騙すは捨身にて 枕木きのこ @orange344
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