第10話 旅の終わり、いや新たな始まり?
【ライ視点】
気がつくと知らない家の中だった。
起き上がると隣には美津が居た。
「気がついた?」
美津が安心したように笑っていて、目元には涙がたまっていた。
現状が今一つかめない。
「ここは一体……」
「私の家よ。でも今日からあなたの家」
余計に意味が分からなかった。
「だからね、あなたのおかげで全部元通りにになったのよ」
それなら何故?
「あなたがここに居るのかって?当初の予定では私の記憶も消してあなたも他の星に行く予定だったらしいの、だけどあなたは力が思ったより強すぎたみたい。この星も元気になったけどやり過ぎちゃったみたい。今、ちょっとパニックになっちゃってるのよね。あなたも今のままじゃ元に戻れないらしいしね。私は貴方のお目付け役で居る事を条件になんとか記憶を消さないようにお願いしたの」
美少女に弱い祠堂。美津の涙目にやられたらしい。
「オイラの事も忘れるなよ?」
「私の事もね」
美津の肩からユウジとナオコが飛び出す。
ユウジとナオコと目が合い一瞬安心する。
「で、でもなんでココが僕の家なの?」
戸惑いながらも美津に尋ねる。
「祠堂さんにお願いして、家の父親の記憶をちょっといじってもらったの。貴方は今日から私の双子の弟よ」
びっくりしてもう一度美津を見つめる。
そして辺りを見渡し思い出したように尋ねた。
「よ、よしこさんは?」
「ああ、なんかねお父さんに聞いた所、使用人の仕事辞めたみたいよ。やりたい事が見つかったからって言っていたらしいわ」
「そっか……。また会えるといいね」
「そだね」
その時玄関の所に置いてある大人の人一人くらいの大きさの植物が揺れる。
音に気が付き、ライは植物(作り物の木)の方に目を向ける、その後ろから上品そうな同い年ぐらいの女の子が現れた。彼女は大人しそうで美津と正反対のタイプだ。
彼女は片手でスカートを持ち上げもう一方の掌をグーにして口元に添えていた。
その格好に僕はなんだか見覚えがあった。
まさか、まさかね。
だけどそんなことありえない。ライは考えたことを否定し、
「どちら様?」
そう声をかけた。
「長崎 とよです。すみません。よろしくお願いします」
淡く笑い頭を下げる少女と、あの上品なおばあちゃん、とよさんがかぶった。
「生命の実、食べちゃったんだってな?それと祠堂様が後でお前の力を借りたことによってその子、もと婆ちゃんなんだっけ?そんな姿になっちまったんだって」
ユウジが頬をポリポリ掻きながら答える。
「そこも祠堂さんがうちの父親の記憶を操作してくれて、私達の一つ上のお姉さんって事になってる。院の人やとよさんの遠縁である身内の人の記憶も上手く操作してつじつま合わせてくれてるみたい」
喉かに笑う美津。
ライも汗を掻きながら苦笑いをする。
ゴトンっ。外で大きな音が響いた。
慌てて玄関を飛び出し現状を見つめる。
僕は大変な事をしでかしてしまった。
開いた玄関の向こうの庭に、巨大化した草花が見え、笑い事じゃないなと思った。
額やら腕やら体中から汗が噴き出す。
それによって美津の家の前にできた水たまりが揺ら揺ら揺れ見知った顔、祠堂様の顔が映し出された。
『フーっ、子供は知らんうちに成長すると言うが、見違えたな、今回はお前の力を侮っていた私のミスだ。尻拭いをさせるようで悪いが、ここからがお使いの本番。私は同じ国に長くは入れない事に国から決められている。しかし私とお前は本来、長く離れてはいけないと言う決まりごとがある。私は今、天中星にいる。そこでお願いして特例を認めてもらった。お前と離れても良い事の条件はその地、地球星を立て直す事。ここをどう立て直すかはお前にかかっている。遠くからサポートはするつもりだ。もう弱虫のお前じゃないっ、お前ならできる』
祠堂様の声はとても優しく本当にできる気がしてきた。
震える掌をぎゅっと握る。
振り返ると美津、とよ、ユウジ、ナオコが笑い大きく頷く。
ライのまだ情けない表情は戻っていないが頷いた。
そうだ。皆もいる。
僕の旅、僕達の旅はこれからだ。
美津はライの手を握り無邪気に笑う。
ライの左耳をユウジが掴む。ユウジの手をナオコが握る。
トヨは皆を見つめ静かに笑っている。
ライも美津の手を強く握り返し空を見上げた。
空は太陽が淡くピンク色に光り赤く染まっていた。
心がじんわりと熱くなる。
先が見えなくて恐い。だけど皆が居る。
皆に後押しされ、こんな僕だけど前に進める気がした。
僕の存在は天災?それとも......〜竜のオツカイ〜 やまくる実 @runnko
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