カクヨム限定!ボクと百合とロードバイク

結城里音 -YUUKI RINON-

第1話 ボクの日常。ジェラート編

 これは、ボクたち女子3人組のライダースの日常。

 ライダースといっても、エンジンが付いたものではなく、ロードバイクと呼ばれるスポーツバイクを乗り回す、ライダースのほうで健康志向&ダイエットを兼ねた集まりで、近場をサイクリングしている。

 メンバーとしては主に、ダイエットが目的の唯香(ゆいか)と、健康志向が強い遥香(はるか)。そして、特に目的がないボクの野々花(ののか)の3人のレディースのグループである。

 キッカケというのは単純なもので、女子高の同じクラスになった私たちは、名前の語尾が『か』で終わることから、一気に仲良しになった。そして、奇遇なことに互いの両親もスポーツ系の出身校だったこともあり、高額と言われていたロードバイクをすんなりと用意してくれていた。

 そんなこともあり、あっさりとロードバイクのグループができたのだった。

「ひぃ~疲れた~」

「もうすぐ、もうすぐ展望台だから。」

「そう。展望台のコテージで休憩しましょ。」

 数日の休みを利用して、近くの峠へと来ていたわたしたちは、体の使い方がいまいちな唯香を真ん中に、前後をボクと遥香でサポートするように隊列を組んでいた。

 ボクたちが向かう先の頂上には、立派なコテージと牧場があり、おいしいジェラートが販売されている。

「ほら、ジェラートが待ってるわよ~」

「わかった~がんばる~」

 上り勾配の強い峠は、すぐ終わる坂道とは異なり、ある程度の距離が続くために、メンタルと体力がものを言う。

 今回は、頂上にジェラートがあるということでメンタルを何とか保っていた。そうして、一番低いギアでゆっくり、そして、確実に少しずつ頂上へと向かっていくと、ようやく、頂上へとたどり着いた……

「ぜぇ。はぁ。はぁ。はぁ。ちかれた~」

「おつかれさま~唯香~」

「つかれたよ~ジェラは?じぇら。」

「落ち着いて、ジェラートっていいな。はい。」

「じぇら~と~」

 ようやくありつけた唯香は、水を得た魚のように活き活きした表情になった。そして、あっという間に食べ終わると、お約束の……

「おかわりぃ~」

「はやっ!」

 ボクと遥香がまだ半分も食べていないのに、あっという間に食べ終わった唯香は、すぐに2個目へと手を付けた……

 ダイエットを目的として始めたはずの唯香。ボクを含め遥香は着々と痩せるものの、唯香は痩せるというか、ウエストは確かに細くはなるものの……

『絶対、胸が育ってるよね!それ!重いのはそれだよね。きっと……』

 通常。ダイエットなどで体重を落とす場合、お肉が付いた順番に引っ込んでいくものだが、ボクと遥香は順調にスリムになっていたが、唯香に関しては運動によって体幹が鍛えられ、ウエストが細くなりただでさえ大きかったものがよりその存在感を増していた……

『当てつけかなぁ?それ、あてつけだよね?そうだと言って!』

「唯香は、栄養がほとんど『胸』に行ってるよね。」

「そんなぁ。邪魔でしかたないんだから。肩だって凝るし、すぐにサイズ合わなくなるし……」

「それ、あたしらからしたら、うらやましい限りなんだけど……。ねぇ。野々花。」

「うん。なに入ってるの?この2つのふくらみの中には……」

 横並びで唯香を真ん中に挟む形で座っていたボクたちは、二の腕の脇から零れ落ちそうな唯香の胸の横部分をツンツンしてみた。

「ほんとよね~この。二つのふくらみで、どんだけの男をひっかけたことか。」

「全くその通り。男は見た目に左右されるからね。こんな特徴があったら、一発で目が行くに決まってるでしょ。」

「ちょっ!二人とも、ツンツンしないで。はははっ!くすぐったいから……」

 ボクと遥香と唯香が横並びに並ぶと、ボクと遥香が唯香からひょこっと頭が出る。つまり、唯香が少し小さいのである。それも相まって、小さいのと胸がデカいのが相まって、男が吸い寄せられるように寄っていく……

『その胸は、ブラックホールかなにかですか?!まったく、うらやましい限りですよっ!』

 そんなことをしてると、遥香が唯香の耳うらを舐め始める。遥香にとっては、日常だろうけど、公共の場所で始めないで欲しい……

「ちょっ!はるかぁ~」

「ん?ちょっとだけ……」

「はるかぁ~」

 公共の場ということを忘れ、自分たちの世界に入りこむふたり……そう。この二人は俗にいう百合というやつである。もうひとりのボクがいるにもかかわらず、まったく気にしない様子で始めるから、困ったものである。

「はいはい。そこまで!」

「えぇ~」

「はぁはぁ。」

「なにしてんの~遥香。ここ、公共の場なんだから……」

「何してるって、塩分補給。」

「はぁ?こんなエロい塩分補給があって、たまりますか!ほら、ふたりとも!」

「うぐっ!」

「うっ、うん。」

「しょっぱ~い…」

「当たりまえでしょ。塩飴なんだから……」

 ササっと塩飴をふたりの口に入れると、渋々納得した様子だったが、遥香の不服そうな顔は見なかったことにした。それから、ボクたちは帰路の途中で昼食などの補給をして、自宅へと戻る。これがボクたちレディースのとあるサイクリングの出来事である……

 帰宅後のボクのスマホには、こんなチャットが流れてきたりしている……

遥香:「汗をぺロペロして、塩分補給って別に悪いこと?」

唯香:「そうですよ。こっちだって……その……いやじゃないですし……」

野々花:「いやいや、時と場所をわきまえなさいよ!この、イチャコラ夫婦め。」

遥香:「舐めてあげる?それとも、舐めるほうが良い?」

唯香:「野々花さんになら、ペロペロいいですよ。」

野々花:「あたしを誘わない!もう、あんたたちは……」

 私たちのサイクリングとただれた日常はもう少し続きそうである……

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