第8話【アルティア視点2】

アルティア視点


トウマ様は山奥でお爺様と過ごしていたらしく、あまり常識のことに詳しくなかった。

なので、私は馬車の中でトウマ様に常識を教えていた。


「ん?」


トウマ様がいきなり南の方を見て耳を傾げ始めた。


「どうかされましたか?」


トウマ様は真剣な顔で私に静かにするように言ってまた耳を傾げ始めた。


そして、いきなり立ち上がったと思うと扉を開けて護衛の人と話し始めた。


「南の方向から大勢の人が向かってきてます!

盗賊の可能性もあるので注意してください!」


え!?

盗賊!

私には何も音なんて聞こえてきませんが?


トウマ様の言葉は護衛の人に信じてもらえずトウマ様は真剣な顔で何かを考え出した。


「トウマ様。

その話しは本当なのですか?」


私は無意識にトウマ様に聞いていました。

この人の言ってることは護衛の人が言ったように気の所為かもしれない。

だが、信じたい、信じなければいけないという気持ちが私の中で膨らんでくる。


「え?

あ、はい!

本当です。

盗賊とは断定できませんが、大勢の人が近づいてきているのは間違いありません」


そう言うトウマ様の真っ直ぐな目を見て私は信じることに決めた。


「わかりました。

あなたを信じましょう。

馬車を止めてください」


私は椅子から立ち上がり、馬車を止めるように言う。

そして、私は馬車から降り護衛の人達に語りかける。


「護衛の皆さん。

南の方から大勢の人がこっちに向かって来ているそうです。

この人を信じて対策を信じて対策を取りましょう。

もし、何も無くてもいいではありませんか。

それよりも恐ろしいのは事前に敵が来ることを教えてくれている人がいたのにも関わらず、その人の話しを信用せずにいた結果、本当に敵が来た時に何も対策なしで挑んでしまい、不必要な被害を出してしまうことではありませんか?」


どうか、私をトウマ様を信じてと願いを込めて精一杯みんなに語りかける。

トウマ様は私達のために必死になって危険を教えてくれているのにそれを信じない理由が何処にあるんですか?

勘違いでも構いません。

トウマ様が私達のことを思って行動を起こしてくれた、それこそに意味があるのです。


「そうですね。

皆の者!

戦闘準備!」


「「「「了解!」」」」


護衛の人達は私の言葉はを聞き入れ戦闘準備をしてくれる。


それから五分程が経過した。


護衛人達がやっぱりガセの情報だったのではないかと気を緩め出したその時、土煙と共に多くの人達がこちらに向かってきているのが見えた。


「本当に来ましたね」


私は、トウマ様を信じてよかったと思う嬉しさと、盗賊が来てしまい誰かが怪我などをしてしまわないかという不安が入り交じった声でそう呟く。

 

そして戦闘が始まった。

私の位置からではよくわかりませんが敵の方が少し人数が多い気がする。


トウマ様は私の傍で戦闘の行方を見守っている。

そんなトウマ様がいきなり後ろの方を見た。


「アルティア様!

次は後ろから敵が来ます!」


「本当ですか!」


「恐らく、今護衛の人達と戦っている盗賊は陽動で今後ろから向かってくる人達が本命でしょう。

私が相手するので、アルティア様のことをお願いします」


いきなり後ろから盗賊が来たと言われパニックになってしまった私を置いてトウマ様は後ろから来た盗賊に突っ込んでいく。

思考が停止してしまっていた私はそれをただ眺めることしか出来なかった。


それから程なくしてトウマ様と盗賊との戦いが始まる。


「あ、あなた達早くトウマ様の援軍に向かってください!」


我に返った私は私を守ってくれている護衛の人に援軍に行くように言う。


「それは出来ません。

トウマ様には申し訳ありませんが、お嬢様を守ることの方が重要なことです」


この人達の言いたいことはわかるので強くは言えない。

この人達はあくまで私を守るための人達なのだ。


何かトウマ様を救うための手段はないのかと必死に考えるがいい案が浮かんでこない。

なんて私は弱い人間なんだ。

どうして私はここで見ているだけしか出来ないんだ。

そんな負の感情が頭の中で回る。


そうしてる間にトウマ様が三人の盗賊に囲まれてしまった。


「トウマ様!

誰か、誰かトウマ様を助けて!」


私は大声でそう叫んでいた。


「私達が行きます」


そう言って、南にいた盗賊達を倒し終わった護衛の人達がトウマ様の援軍に向かって行き、それに気づいた盗賊達は撤退していく。


ああ、これで一安心だ。

私は胸を撫で下ろす。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る