第3話【すみませーん】

「ふぅ、やっと出れた」


あれから二時間ほど歩いただろうか、ようやく森から出ることが出来た。


ここまで来るのに結構な数の魔物に襲われ、殺して来たのでレベルも8まで上がり、歩くスピードも上がっていた。


襲ってきた魔物は基本ゴブリンやオークだった。

どちらも身体能力は俺より圧倒的に高かったが、棍棒などを力任せに振るっているだけだったので剣の心得のある俺からしたら倒すのは容易だった。


「出たのはいいが、まだここがどこかわからんのだが詰んだか?」


森を出てからもう一度地図を確認し自分の位置を探したものの全くわからなかった。


「どうしましょ?」


俺が途方に暮れていると遠くの方に一台の馬車が見えた。


「あ、人いるじゃん!

あの人に聞こ!」


俺は「すみませーん!」と声を上げながら馬車の方に近づいていく。


あれ?

遠くからはわからなかったけどめっちゃ高級そうな馬車じゃん!

しかも護衛みたいな人達もいるじゃん!

やば!

俺殺されるかも!

まあいいか、ここまで来たら向こうにも気づかれているだろうしここで逃げたほうが怪しいしね。


「あの、すみません!」


「止まれ!」


案の定護衛の人に止められた。


「お前!

この馬車がボワラクテ公爵家の馬車とわかっていての狼藉か!」


よりによって公爵家かよ!

公爵家って言ったら王族の次ぐらいに偉い貴族だよな!?

まじ殺されるぞおれ!


「いえ、申し訳ございません!

自分、田舎者で道に迷ってしまい困っていたところに馬車が通りかかったので道を聞こうと思いお声がけした次第です!」


とりあえず、謝罪と言い訳をする。


「戯言を!」


「おやめなさい!」


護衛の人が槍を構えた途端、綺麗な声が響いた。


よく見ると馬車の中から、透き通るような肌で綺麗な銀髪の見た目十八歳ぐらいの女性が出てきた。


「しかしお嬢様!」


凄く綺麗な人だなぁ。

お嬢様ってことはこの女性は公爵家の娘なのかな?


「何を立ち尽くしている!」


護衛のその言葉ではっ!っと自分が呆然と立ち尽くしていたことに気がつき慌てて跪く。


慌てて跪いたけどこれあってんのかな?

跪くのって王族にだけかな?

まあ、どっちでもいいか。


「跪かなくてもいいのですよ。

立ってください」


「はい」


俺は立ち上がり女性の顔を見る。


「私の名前は、アルティア・ボワラクテです。

あなたの名前を伺ってもよろしいですか?」


こんな見ず知らずの庶民に丁寧に話してくれるんだな。

凄くいい人じゃないか。


「あ、俺の名前は、」


あれ?

ちょっと待てよ何て名乗ればいい?

本名は坂田刀真だからそのまま名乗るか?

いや、でも本に苗字は貴族だけって書いてあったような気がする。


「どうかしましたか?」


「すみません。

改めまして俺の名前はトウマです」


結局本名の名前だけを答えることにした。


「トウマ様は先程道を聞きたいと仰っていましたが、目的地は何処になるのですか?」


「大変お恥ずかしながら今自分が何処にいるのかもわからない状態でして、とりあえず近くの街にでも行けたらと思っているんです」


「私達もこの近くにあるドルンドという街に寄るんですが、宜しければ一緒に行きますか?」


お!

それはめっちゃ助かるけど。


「お嬢様!」


やっぱり護衛の人が止めるよね。

こんな見ず知らずの人間を公爵家の令嬢と一緒に行動させるなんて何かあった時に困るもんね。


「私が決めたことに何か文句があるのですか?」


アルティア様が護衛の人を見る。


おお、こわいこわい。


「えーっと」


どうしよう。

雇い主はアルティア様なので決定権はアルティア様にあるから頼むのは問題ないと思うけど、護衛の人の心配もわかるんだよなぁー。


「お嬢様、それはいつのですか?」


「ええ、いつものよ」


いつものって何?

めっちゃ怖いんだけど!


「わかりました。

ではこの男をどのように扱えばよろしいですか?」


え?

今ので納得しちゃうの?

さっきまで怒っていた護衛の人を納得させることが出来るいつものって何?

俺どこかの実験場とかに連れていかれて実験台にされたりしないよね!?


「お客様として扱ってください」


「はい、わかりました」


「ではトウマ様行きましょうか」


え、俺ついて行きますって言ってないよね?

まあ、俺にはついて行くしか選択肢がないみたいだからいいけど。


「はい、お願いします」


「それでは馬車にどうぞ」


「ありがとうございます」


一瞬馬車に乗ってもいいのかな?と思ったが護衛の人も何も言わなかったので大人しく乗ることにした。

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